絶対零ド

□絶対零ド
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第十六話―民の皇―










ラクスの体調が全快したのは、帝都に帰朝してから半月経ってからのことだった。






体調が全快してからというもの、すぐに皇女としての公務に取り掛かり、戦の後処理を始めていた。

















「…捕虜交換ですか」












「前例のないことです故、議員たちも困っています。この件は、この度の戦の総指揮官をなさった殿下の指示をあおぎたいと」














エピリア国から来た書簡に目を通したラクスは、目の前に座っているルレリアを見つめた。











書簡にはカミーユにて捕えたエピリア国軍と将たちを、カミーユを攻めた時の駐屯兵の捕虜を交換したいというのだ。








まったくもって前例のない申し出に、元老院は判断に困っている、と報告を受けたラクスは、頬に手を当てる。


















「捕虜となった者は、奴隷になるのが通例ではありますが…将たちもいますし、反乱でも企てられたら面倒なことになりますわ」














「はい。我が軍が捕虜とした兵と捕虜とされた兵の数は違いますし、将たちをみすみす返すというのも」















うーんと考え込む二人に割り込むように、バンッと扉が勢いよく開かれた。





















「殿下っ!まだこんな所にいたのですね?!」
















腰に手を当て、眉間に皺をよせて仁王立ちをしているミーアは、ラクスの姿を目に入れた途端に、声をあげた。

















「ラクス様っ!今日は何の日か、覚えておいでですか?!」












「……ミーア」











「今日は、参賀の日のためのお衣装の打ち合わせがある、とあんなに申し上げたではありませんか!ラクス様のお仕事は政だけではありませんわ」















ムムッと怒りをあらわにするミーアに、ラクスは目を合わせられず書類で顔を隠した。書類の隙間から、ルレリアに目を遣るも、クスクスと楽しげに笑うだけだ。
















「さあ、ラクス様。さあ!」











ガシリと腕を掴まれ、ミーアに逆らうことができず、そのまま引きずられて行った。









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