TIR NA NOG

□V-]U
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「お腹いっぱいになった?」



「はい、とっても」






昼食後、イザークに渡された新しい仕事を移動させたソファの上で一心不乱に処理し残業せずに終わらせた。

そのおかげで定時通りにビルから出れた。会食とか他の予定もないので、明日までは二人っきりだ。


しかも午後からだから最高、とキラは満腹で機嫌の良い恋人を引き寄せた。


長い夜を過ごしたくて帰りの車の中で簡単に済む且つボリュームたっぷりの食事にしたのも成功だった。お嬢様育ちの恋人はそういった趣向が珍しいと喜んでくれるのも幸いだ。








「またしましょうね。お車の中で、まるでピクニックですわ」


「そうだね」



ニコニコしている恋人を見つめながらキラは少し安心した。こうしていると何も変わらない。変わった所などない、いつも通り。







「これから何をしましょうか。まだお休みするには早いですし」




うーんと視線をさ迷わせる恋人の眼を追って、キラは柳眉をひくりと震わせる。先にあったのが、色んなアルコールが置いてあるバーカウンターだったからだ。






「なにかお飲みに」


「お腹いっぱいになったんだから、僕は君といちゃつきたいな」





ぐいっと白い頬を両手で挟み込み、キラは恋人の蒼い瞳を覗き込んだ。紅い唇に軽く触れ、じいっと見つめる。





「昨日は悪戯しなかったでしょ?だから今夜はいっぱい悪戯したいんだ」


「!」


「お風呂一緒に入ろ?」





愛する恋人がナニを求めているのか、理解したラクスは頬が熱くなるを自覚した。紫の瞳に含まれる艶美さは思考を虚ろにする。


執政服の帯にキラの指が回り、ラクスも慣れたように目の前の詰め襟に指を引っ掛けた。







「脱がして、ラクス?」



「・・はい」






引き締まった胸板や腹筋に心拍数が上がってクラクラする。







「寂しかったよ、ラクス」




肌と肌を重ね合わせてそう囁かれば、もう何も考えられなくなる。






「…わたくしも、貴方が恋しかった」





白く細い腕が首に回り、ギュッと力が篭る。







「………」





恋人の心にある不安定さはいつも奥深い所に息を潜めて隠れている。簡単には顔を出してくれないから困り者だ。


だからどんな些細な変化も見逃したくない。



不安になっているのなら傍に居て、それを取り除いてあげたい。









「僕もだよ、ラクス。君のことが恋しくて堪らなかった」



「‥はい」






首に回った腕が頬に触れる。恋人の望むことがわかったキラは軽い躯を少し持ち上げた。


愛しい顔を見下ろす形となったラクスは、艶やかな紫の瞳を見つめる。




虜になってもう何年も経つ。美しい双眸。









「キラ」





――いとしいひと。


最愛と尊敬と、すべての想いを。






「‥‥ん」




降ってきた唇をキラは受け止めた。


重なり合っただけで心が震える。


何の過不足なくピタリと合わさった。






この瞬間がどうしよもなく恋しかった。


何故こんなにも恋しくなるのか。



もっと遠く離れていた時もあったのに。


逢いたいと思えばどうにでもなる所にいるのに。








「っ…はぁ」




多分、それは、彼女の心が伝わってきているから。ラクスの不安を感じているから、僕も不安になる。彼女の傍から離れ難くなる。





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