TIR NA NOG

□V-]T
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「‥‥‥‥」





ぽーっとしたまま、ラクスはまだぼやけた視界で目の前の寝顔を見つめた。


さらさらの髪に、長い睫毛。綺麗な鼻筋に、整った唇。愛してやまない恋人の寝顔にそっくりで、まだ夢の中にいるようだった。





最近は夢を見ないから、夢というのは語弊があるかもしれないが。



夢なら醒めないでほしい、と思った。


ずっと逢いたかったから。少ししか離れていないのに、すごくすごく恋しかった。




のそのそと手を伸ばし恋人の頬に触れる。



彼の胸の中にいる、抱き込まれているという体勢なため簡単に届いた。



温かい頬に触れ、鼻を辿り唇をなぞる。









「…すき」





触れていたら自然と感情が溢れてきた。


夢なら何をしても許されるだろうと、ラクスは唇にちょんと軽くキスをしてみる。たったそれだけのことで血圧が上がった。頬が熱くなりぼやけた思考がクリアになる。







「・・・・」





どうも夢じゃないような気がしてならない。寝ぼけが晴れてくると夢と現の違いがはっきりしてくる。







「‥‥キラ?」




何故ここに、居るのだろうか。


帰ってくるなんて聞いていない。


嬉しいサプライズだが、まったく予想していなかったことと夢だと思って好き勝手なことをした、ということに狼狽えてしまう。








「どうし……っ?!」




起き上がろうとした瞬間、眠っていると思っていた恋人の腕に力が入りラクスはベッドには引き戻されてしまった。








「…キラ?」



「まだ寝てよ。・・何時?」






眉を少し寄せ瞼を閉じたまま、むにゃむにゃと呟くキラにラクスは身体の力を抜いた。


柔らかなマットレスに沈み込む感覚が酷く新鮮に感じられる。彼の胸の中に居るだけで、すべての力が抜ける、ということに気付かされた。








「…いまは、6時‥くらい」





それが普通だったことを思い出した。


ここ数日で、どれだけ気を張っていたか。







「まだはやい…んにゃ…、……あと…いちじかんは…ねれ…る」




キラが居ないだけで肩から力が抜けない。


彼が傍に居ないと息が苦しい。



寂しくて、堪らない。






「……では、あとすこし、だけ…ですよ」





あと1時間。



何も考えないで、ただ此処にいられる。





それがどうしようもなく嬉しい。


すべて忘れられる。









「ラクス」



「‥‥?」



「もっと、くっついてきて」






隙間なんてそう空いていないのに、寝言のように呟いたキラにラクスは胸が締め付けられた。切ない傷みなどはない、ただ、甘く疼くような感覚に満たされる。








「・・はい」




時間が止まれば、この刹那に微睡んでいられたら。


そう願わずにはいられないほど、ラクスは幸福を感じて二度寝を楽しんだ。







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