TIR NA NOG
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評議会ビル近くのレストランは政府要人御用達ということもあり、完全な個室が数多く用意されセキュリティも万全だ。
コース料理を頼んでから、ラクスは食前酒に口をつけた。季節の果実酒は甘くて美味しい、けれど今はもう少し強めのアルコールが欲しかった。
無駄だと知っていても、少しでも気分を晴らすために。
「今日は断らないでいてくれてありがとう」
「…断るだなんて、そんな」
叔母の性格、本質は直球だ。
言葉選びから、やはり叔母として目の前に居るのだとラクスは確信した。
叔母としてならば、追及してくる。
ほんの僅かしか残っていないアルコールを喉に流し込み、ラクスはアイリスを見つめた。
「ごまかさなくてもいいのよ。私を避けていたでしょう?」
運ばれてきた前菜を優雅に口に運ぶアイリスは何てことないように言った。天気でも話題にするような気軽さで。
「叔母さま」
「今日、准将とお話する機会があったの」
「……」
「改めて思ったけれど、彼があのフリーダムのパイロットなのよね」
アイリスは目の前に座った姪の表情などまったく気にならないのか、脳裏に浮かんだ青年の顔を思い出していた。
「アスランと比べると、タイプが違うから驚いたわ。まったく軍人らしくないのね」
「…彼は、軍人としては」
軍人としてのカリキュラムを経ていないのはアイリスも承知している。承知していたからこそのアカデミーだ。
叔母が意図しているのは人間性。
自分自身も常々、痛いほど想っていること指しているのだ。
“彼に武器は相応しくない”――優しい彼に、持ってほしくない。
与えておいて、ずっと抱えてきた想い。
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