TIR NA NOG
□V-\
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「――マジでヤバかった!!」
夕食時のカフェテリア内はどこも似たような会話ばかりで、キラはどんな顔をしたらいいのかわからなかった。
「キラも見ればよかったのに。いくら免除されてるからって見て損はなかった」
講堂から呼び出されてしまった理由を説明された納得したいつもの面々は、口々にそんなことばかりを繰り返す。
会話の中心は講義の内容。一言で云えばビデオ鑑賞及びレポート提出なのだが、映像は先の戦争、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦。
「そりゃあザフトの主力は代わってるけど、アレはヤバい!なんかレベルからして違う」
興奮がおさまらないセイは食事もそこそこに、映像を見ていない友人に力説した。ニックも親友に同意しているらしくしきりに頷いている。
「噂は聞いてたけど、あそこまでとは思ってなかった!パイロットの一人って俺達と歳そう変わらないって信じられねぇよ」
「アスラン・ザラだろ?4年前だから、確か16。今の俺達より年下」
「‥‥‥」
第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦なのだから、映像にはフリーダムやジャスティスが多く残っている。ミーティアを装備した戦闘の映像もあり、その機動性能は見なくても熟知しているキラはどう反応すべきか判らない。
「フリーダムはついこの間まで戦場に出てたんだろ?」
「ああ。ほら、前にラクス・クラインを護衛してたシン・アスカが墜としたって。ザフトじゃ有名らしい」
セイとニックの会話に後方に座っていたグループも加わり、その場が盛り上がっていく。
「墜とした、っても、いたよな?フリーダム、最後まで」
「ザフトの要塞、フリーダムが単機で突っ込んで落としたって噂だぜ」
「フリーダムの後継機だろ、確か。俺の兄貴、ザフトの整備にいるけどアレはヤバいって言ってた。どんなOS搭載したら、あんな動きできんだよって。理論上はできても、機体とかパイロットとか色々無理があるってさ」
食すわけでもなく生温くなったスープをスプーンですくったり、浮いた具を突いたりして、会話をキラはぼんやりと聞いていた。
意識していなくても、“フリーダム”に関する会話は耳に入ってくる。ザフト軍内部にいるよりは棘がない気がするな、と思いながらスプーンを置いた。
講義を受けていないこともあるが、なんとなく入りづらい話題にキラはこっそり溜め息をつく。
軍内部ではここまであからさまに話されていなかった、というよりは、聞こえてこなかっただけだ。知らない所ではこんな感じだったのかもしれない。
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