TIR NA NOG
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「後継機ってことは、やっぱ前のヤツは墜ちたってことだよな?じゃあパイロットは?」
「噂じゃ、フリーダムは串刺しだったって話だから生きてないんじゃない?」
「実はジュール少佐がパイロットってのはマジか?ほら、議長の側近だし」
「えぇーっ?!俺はアスラン・ザラって聞いたけど」
「俺はラクス・クライン本人が乗ってるって聞いた」
パイロットに対する憶測がどんどん広がり収拾がつかなくなっていく。もう口を挟む余地無しと判断したキラは同じく無言で食事を続けるルイを見遣った。
するとキラの視線の動きに気づいた何人かが、同じようにルイを見つめる。
ぴこん、とルイを見た同期生が同じようなことを思った。
“此処にはルイ・ランカスター、つまり情報通が居る!”、と。
ランカスターといえば、父は国防委員長、母はアカデミー理事、従姉は最高評議会議長。
今ここで広がる疑問の答をすべて知っているに違いない。答えてくれるかは別として、知りたい欲には皆勝てなかった。
「ル、ルイはなんか知ってるんだろ?」
「教えたりなんかは、できるのか?」
無理に聞き出すつもりはありません、といった思いが声に表れた問い掛けだった。
食事を終えナプキンで口元を拭っているルイに皆固唾を呑んだ。いつの間にか、周りが静かになっている。聞き耳を立てている、と誰にでも分かる状況だった。
一挙一動が注視されていることに気づいているルイは臆することなくニコリと微笑んだ。
「俺が知ってるのは、まず、ジュール少佐とアスラン・ザラがパイロットじゃないってこと。あ、ラクスも違う」
意外にもあっさりと答えてくれたルイに聞き耳を立てていた生徒たちがザワリと反応を示した。
「じゃ、じゃあ誰っ?有名な軍人?」
「ルイは会ったことあるのか?」
隠すことなくぺろっと喋ったルイへ、矢継ぎ早に新たな質問が飛んで来る。
「‥‥‥」
新たな問いにニコリと微笑んだルイと一瞬目が合ったキラは目をぱちくりさせた。
「非公式だけどネ。会ったよ。しかもザフト、ラクスの側にいるんだ」
「!」
一瞬の目配せの意味を理解したキラは正直驚いた。ルイがここまで喋るとは予想していなかったからだ。ザフト内では知れ渡っているとはいえ、他での認識率はまだまだ浅い。
情報通ならばフリーダムが現在ザフトに所属している、ということを知っているかもしれないが、調べなければ分からないことだ。
その辺りの情報操作は主にオーブ上層部の思惑らしいが、キラも詳細はあまり知らない。
「前の大戦の時からラクスを守ってきた騎士(ナイト)だよ」
「マジかよっ?!フリーダムって今ザフトにいるのか!」
「俺オーブだって思ってた!」
「でも確かにラクス・クラインとフリーダムって一緒ってイメージがあるかも!」
情報源の信用度は高い、ということもあり知らされた新事実に興奮が高まっていく。
フリーダムとは、それほどまでに彼らの心をくすぐる存在なのだと、キラは思った。
あまり意識したことがなかったため、どう思われているのかなんて知らなかった。
知っているのはザフト内部のごく一部。
“あの”フリーダム、の、あの、に含まれたのは敵の意味だった。しかしアカデミーでは不思議とそんな意図は伝わってこない。
彼らの中のフリーダムは、ラクス・クラインと同じで、戦争で活躍し終結させた平和の象徴なのだ。
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