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――婚姻統制の緩和・廃止案及び移民制度の改革。
第三世代の出生率低下に歯止めがかからず導入された婚姻統制の結果が芳しくないのは、誰もが知るところである。
自由婚を禁じたこの制度により婚姻率も低下し、また中立の月やコロニーに人口が流出していくのは深刻な社会問題となっていた。
戦前から静かに議論が交わされてきた議案だが、開戦により中断されてきた。戦後の復興が順調に進む中、やっと議会にて話し合う機会が巡ってきたのである。
「こちらが婚姻統制に対する年代別の資料です」
「‥ありがとう」
渡された資料に目を通したラクスは、大まかに分類された意見をじっくり見つめる。
年代別の統計は予想していた通り偏りが見えた。
出産適齢期の世代はほぼ半分に割れ、それ以上になると婚姻統制支持が上がり、それ以下は不支持が上がる。男女別にするとまた更に少し数字が変わってくる。
子どもが欲しい。そう願うのはごく自然のことだ。コーディネイターもナチュラルも関係ない。生存本能のなのだから当然かもしれないが、最近の傾向を鑑みれば婚姻統制緩和は難しくないだろう。
そう判断できるのは戦災孤児の養子縁組率が上がっているからだった。
子どもができない組み合わせだから結婚できない。けれど好きな異性(ひと)と共にいたい。そう願うカップル達が戦災孤児となった子どもたちを養子として引き取ることが増加していた。
コーディネイター、ナチュラル関係なく。
コーディネイターがプラント以外で暮らすとなると中立、というのが今現在の情勢だ。
戦前からの空気は一朝一夕では変えられず、旧地球連合の支配地域への移住は難しく政府としても推奨できる水準ではない。
ならば逆に、と出生率低下による人口減少の打開策を今回の政策に合わせた。
初期段階は地球圏の戦災孤児に焦点を当てているが、段階を踏んでナチュラルの移民に繋げたい。コーディネイターが大半のプラントにナチュラルが移住するようになれば、出生率の未来にも希望が見出だせる。
種としては息詰まり滅びを待つしかないコーディネイターはナチュラルに回帰する。
(…お父様)
父が望んだコーディネイターの未来。
父が為し得なかったこと。プラントに戻り自らが為すべきことのひとつ。
愛すべきプラントのために、コーディネイターのために。
(・・叔母、さま)
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