TIR NA NOG

□V-Y
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「・・キラ?おーい」




ラクス・クラインの登場に周囲が色めき立つ中、どんな反応もしないキラに友人になったばかりの二人は揃って首を傾げた。


しかしすぐに何か思い付いたのか、ああ、と声を漏らす。









「ラクス・クラインだよ。知らない?」



「オーブ出身っていっても、知ってるよな。戦後はかなりメディアに出てたし」






どんな反応をしよう。友人たちの顔を見ながら思案したキラはにこりと笑った。











「‥綺麗だから、見惚れちゃった」




嘘じゃないな、と自分で言っていて思った。


不意打ちを喰らうと今でもハッとしてしまうのだから。今回も不意打ちだ。来るだなんて聞いていない。入学から一週間はアカデミーをメインにしたスケジュールが組まれているため、ラクスの予定に自分は組み込まれていない。










「まぁ彼女は歌姫だったし。その気持ちはわかる!」


「彼女が議長になってから実際、軍に志願するって奴増えたって聞くぐらいだしな」


「…ふーん」


「だけど、あの感じだと、近づくの無理じゃねー?ザフトレッドになれたとしても厳しいって」






似たような会話があちこちから聞こえてきて、キラはまたぼんやりしてしまう。自らの思考に浸かってしまう。










「あの白ってイザーク・ジュールだよな。赤は確かシン・アスカ」


「議長ともなると、トップエリートしか近寄れないのも道理だよな」






へぇ二人とも有名人だ。それにしても、やっぱり遠くから彼女を眺めるのは嫌だな。




あんまり良い気がしない。



根深く残っているのかな。離れていた日々のことが。モニター越しでしか彼女の姿を見れなかった。穹を見上げることしかできなかったあの日々が胸をチクリと刺している。








「あ、始まる」






進行役が壇上に上がったことで、騒がしかった会場内が静まり返った。セイとニックも背筋を伸ばし壇上に目を向ける。挨拶が始まり入学式が粛々と進行していく中、キラはラクスの横顔を周囲にバレないように窺った。



こちらに気づいていないから横顔だけ。





最初はそれでも満足していたが、直ぐに物足りなくなった。こちらを見てほしいと思うようになる。









「‥‥はぁ」





もやもやしてきてしまった。次いつ会えるかもわからないのに。一週間は確実に会えないのに、もやもやしてしまった。手を伸ばせば届くけれど、今は届かない。そんな空気がどうしようもなく不快だ。






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