TIR NA NOG

□雨と愛と、酒と口づけとW
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『――キラ』


『‥母さん』






プラントに上がることを決めて、モルゲンレーテでの仕事を進めながらラクスを出し抜くことをまず考えた。プラントに行く、ラクスの傍に。そして彼女をまもる。



この願いを叶える方法はたった一つ――ザフトに入ることだった。





終戦後ラクスは直ぐにプラントに戻り、そしてバルトフェルドさんもザフトに復帰することになってオーブを離れることになった。


ザフトに復帰することを決めたのは、ラクスの一声があったからって自慢げに言われて、正直無茶苦茶嫉妬した。僕には頼らないくせに何も言わないくせに、彼女はバルトフェルドさんを頼って何でも話す。





僕は突き放して、バルトフェルドさんは側に呼び寄せる。



こんな理不尽、嫉妬しないほうがおかしい。





僕の殺気だった気配に何か感じることがあったのだろう、バルトフェルドさんはシャトルのターミナルであることを教えてくれた。









“――実は、な。彼女がプラント入りする前にあることが持ち出されていた”


“?あること、って何ですか”




また自慢話だったら報復のひとつでもしてやろうとは物騒なことを考えていると、それすらもお見通し彼は笑いながら“教えて”くれた。






“ジャスティスのパイロット、アスラン・ザラのプラント本国の帰還だ”



“っ?!!”



“2度もザフトを脱走した裏切り者だが、2度も大戦を終結させた英雄。停戦したといっても、敗戦したのとあまり変わりない状況で政府はプラント市民からの信頼を失った”



“‥‥‥”



“ザフトにとってアスランは裏切り者だが、市民たちにとっては英雄だ。ラクスとの組み合わせもあるしな、民意を取り戻すためにも、その強い力を得るためにも恩赦を出すと行ってきたんだ”






ラクスとの組み合わせ、それは婚約者だった時のことだ。婚姻統制のプロバカンダ的役割として二人の婚約はプラント中の誰もが知るところだったって聞いた。


人気もあった、って。だから今でも、二人の婚約を信じてる人が多いって。










“アスランにその気がないのはこっちは誰もが知ってる。だから余計なことは耳に入れる必要がないと、彼女がその辺を停戦協議の時に処理してオーブ軍所属としたらしい”


“そう、ですか”





確かにこの話を聞いたらアスランも少し迷ったかもしれない。オーブに残ることは変わらないとは思うけど、ラクスと一緒でプラントは彼にとっても大切な故郷だ。


躊躇いに心を傷めていたかもしれない。



不器用だけど優しい幼馴染みなら。





ラクスもきっとそれがわかってた。


だから内々で処理したんだ。







――アスランにはそうやって思いやりある優しいことするくせに、何で僕には冷酷なことをするんだろう。










“‥だが、話はこれだけじゃない”


“?”


“評議会…正確には、国防委員会だが、もう一人プラントに、つまりはザフトに呼び寄せたい奴が居たんだよ”








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