TIR NA NOG

□雨と愛と、酒と口づけとV
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星が綺麗な夜だった。


ユニウスセブンが落ちたのは。










『――ラクス』






孤児院が流されカガリの別邸に移ってからラクスの様子がおかしい。確かな理由があるわけじゃない。ただそう感じる。


時折、本当にたまに、感じていた違和感を、別邸に移ってからよく感じるようになった。





一人で居る時に、何か思い詰めているような顔をしている。そんな姿をこっそりとしか見れないのは、彼女は何も言わないからだ。


気になって聞いたことはある。何回か。




でも、何も、と返されて終わる。







それ以上、彼女からは何も読み取れない。


感情を殺すのが上手な彼女は、追求する毎に更に巧に沈んだ顔を隠すようになった。


だから話してくれるのを待つことにした。






ユニウスセブンが落ちて、きっと色々考えてるんだと思う。それは多分プラントのこと。


初めて出逢った時、ラクスはユニウスセブン追悼慰霊団の代表だった。彼女は歌でプラントの人たちの悲しみを癒す立場にいた。



だからきっとプラントのことを心配してる。





彼女の故郷。彼女を待つ人たちがたくさん居る宇宙(そら)を思ってる。










『‥‥‥』





開戦の兆しが濃くなっていると、バルトフェルドさんが言っていた。オーブも追い詰められているって。アスランも悩んでた。


ユニウスセブン落下の首謀者たちはザラ派を名乗っていて、自分には何ができた、できるのだろうって。





そしてその時、クラインの名前も出たって。


クライン。クライン派は、ラクスが率いていた派閥だ。元はシーゲルさんが率いていたけど、亡くなってしまったから。




プラントに彼女は居ないのに。もう表の政治の舞台から退いて、静かに暮らしているのに、クラインの派閥は消えていなかった。


このままオーブが連合との条約を結べば、ここには居辛くなるだろうってバルトフェルドさんはこぼしてた。僕たちコーディネイターが居られる場所はプラントにしかなくなる、って。





もし、そうなったら。





プラントにラクスと一緒に行ったとして、そしたら彼女はどうなるんだろう。


ラクスはどうするんだろう。





今はオーブにいる。オーブだから、僕の傍にいてくれるのかもしれない。でも、プラントに戻ったら。近くで自分を求める人たちを見て、これまでのように僕の傍に居てくれるのかな。ずっと一緒に居てくれるのかな。








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