TIR NA NOG

□雨と愛と、酒と口づけとU
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オーブは熱帯気候に位置し、宇宙暮らしが長い僕はたまに大自然とやらの被害を受ける。




カガリは空気とか何とかで、気候の変化に対応しているらしいが、初心者が真似できる技じゃない。


一年になるけれど慣れない。









『‥‥はぁ』






ざばぁっと、バケツをひっくり返したような豪雨に襲われるのもよくあることだ。


ラクスとの気まずい雰囲気に耐えられず静かな一人冷静になれる場所を求めて自然の中を突き進んだ結果、岩場でずぶ濡れになった。





雨宿りを兼ねて岩場の奥、小さな空洞がある所に座った途端溜め息が出た。


逃げて、びしょ濡れになっている自分がひどく格好悪く思えて仕方ない。








『なに、やってんだろ』






そろそろ戻らなければラクスが心配する。


もう夕方だ。それ以前におかしな態度を取って彼女を不安にさせてしまった。





ただでさえ彼女は何かを思い悩んでいるのに、余計な心配かけさせてる。


この問題を解決する手段は、多分、ラクスに話すこと。抱えている複雑なこの感情を言ってしまえば、楽になれる。





でも、言えるのだろうか。




君の傍にいると、抱きしめたくなって、キスしたくなって、もっとそれ以上のこともしたくなってしまう。だから君を避けてきた。









どんな反応するか、正直まったく想像がつかない。僕は格好悪いって思う。


逃げるのも格好悪いけど、正直に打ち明けるのも格好悪い。










『……はぁ』






だめだ。結論出ない。静かな場所で考えればって思ったけど、だめだった。


平行線のまま。如何わしい劣情を抱いてることを知られて軽蔑されるくらいなら、今のままでもいいかもしれないという現状維持案が最終的に浮かぶ。いつも行き着く先は同じ。





ラクスに好きだと告げたあの夜にはあった勇気が今の僕にはない。


彼女が大事だから、軽蔑や嫌われるかもしれない一歩は踏めない。






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