TIR NA NOG
□雨と愛と、酒と口づけとT
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――君に逢えない夜は、あの日のことを思い出す。
君への想いが変わっていたことに気づいたあの夜を。
そして輝く星を見つめて、願うんだ。
遠く遠く、空の果てに行ってしまった君も、僕を想っていてほしいと。
僕と、同じ気持ちでいてほしいと。
まだ、あの日と同じ気持ちでいてほしいと願ってる。
雨と愛と、酒と口づけと
誰かを好きになったり、愛したりする資格は僕なんかにはない――そう、思ってた。
戦争でこの手で奪ってしまったたくさんの命と、守れなかった彼女に謝り続けるために生かされた、と思った。
自分の誕生のために幾人ものクローンが生み出された。それだけでも業が深いというのに、僕は生きている。
なんで、生きているのか、わからなかった。
生き残ってしまったことが不思議で、どうして宇宙の闇に消えてしまわなかったのだろう、と自問する。
星空を見る度、そんなことを思った。
“貴方を見つけて、わたくしは幸せになりました”
“帰ってきて下さいね、わたくしのもとに”
でもそんなときは決まって、彼女の言葉を思い出した。
宇宙空間に投げ出され、絶望というものを味わっていた時、彼女から託された指輪が視界を横切った。
それと一緒に言葉も思い出して。
約束を、思い出して――涙が溢れた。
こんなにも業が深い罪深い僕を待っていてくれる彼女がいる。人を殺すことしかできなかった戦場で、守ることもできると優しく教えてくれた彼女が。
僕に逢えて幸せだと微笑んでくれた彼女、ラクスが。
約束を果たさなくてならない。
消えてしまったら、誰よりも優しい彼女を哀しませてしまう。
そう思ったら、光が見えた。
親友がくれたトリィに導かれ、彼と、そしてきょうだいと知れた彼女が笑って迎えに来てくれた。
生きていることに喜んでくれている。
それが、すごく、嬉しかった。
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