TIR NA NOG

□V-U
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「――隊長!おかえりなさ‥あ、またですか湿布」



「ごめんね、ルナマリア」





オフィスに戻ると雑誌を見ていたルナマリアが顔を上げるが、直ぐにシンと同じように眉を寄せた。


業務中に雑誌を読んでいることも大して気にしない上司は、ルナマリアの読んでいた雑誌を覗き込む始末だ。





こういうの見ると、シンは思う。


彼は軍人に向いていない、と。






戦闘訓練をする度に、覇気のない様子を見る度に、そう思ってしまうのだ。


誰も敵うことができない当代一のMSパイロットとしての遺伝子を持っている、かつてそう言っていたのはギルバート・デュランダル議長。





そんな才能を持っていたとしても、キラ・ヤマトという彼を知ってしまった今、シンは似合わないと思ってしまう。


いくら遺伝子がそうであっても、気質が優し過ぎる彼に血生臭いことは似合わない。













「――わぁ可愛いね」



「そうなんですよー!この間、誕生日だったんですけど何も買わなかったからこの際ご褒美で買おうかなって。隊長はどれがいいと思いますか?」



「‥‥‥」








棘が何本もあるルナマリアの言葉は正直耳に痛く、シンはすいっと視線を逸らした。


数日前の誕生日をすっかり忘れていたことへの怒りはまだおさまっていないらしい。




だからこれみよがしに雑誌を広げブランドもののアクセサリーを物色しているのだ。










「うわぁ結構高い」



「そんなことないですよぉ。私たち給料遣ってる暇ないくらい忙しいし。これくらい何ともありません!」



「あ、そういえば僕も給料とかどうなってんだろ」



「いくら給料貰っても、遣い道ってなかなかないですよね。休みも不定期だし」






ペラペラと雑誌をめくるルナマリアの声音のところどころに棘を感じたが、気のきいたことも言えない。そう感じたシンは完成された書類に手を伸ばし無視を決め込んだ。


それがルナマリアの怒りを助長させることになると察するには、シンはまだ未熟だったのである。











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