TIR NA NOG
□雪解けの抱擁、嘘つきの涙W
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星が瞬いた。眩しく、煌めく。
そしてそれよりもまばゆく閃光を放った、新たな剣。
『‥‥キラ』
新たな剣で恋しい彼は自分を護ってくれた。
また、まもらせてしまった。たたかわせてしまった。武器を取らせてしまった。
その強さに力に、ブリッジにいるクルー総てが息を呑んでいる。きっと相手の方も同じだろう。
それを操る彼は、あんなにも、兵器が似合わないというのに。また、戦場に戻らせてしまった。
隠して造っていたアレを、彼は笑って受け取った。ありがとう、とさえ口にした。
『・・・っ』
謝らなければ。すべてのことを。
覚悟をしていたことを。約束を破ろうとしていたことを。
二年前、あんなに約束にこだわって、縋っていたのは自分なのに。彼からのソレは、簡単に破ろうとした。
『――ラクス様。後は我々が』
思いやり溢れたダコスタの声にラクスは淡く微笑んだ。航行不能になった部隊に追撃は不可能。当座の危険は脱した。
『…いいえ。わたくしは』
ダコスタの厚意の意図は分かっていたけれど、ラクスはブリッジを離れたくなかった。無意識で、だ。
なんとなく分かっていた。
ここを離れたら、キラに、きっと酷く責められることになる。
つい先ほど、つかの間の再会を果たした時はあまり深く考えていなかった。
アレを渡すことへの罪悪感と、そして再び逢えたことへの喜びが混じり合って。彼の温もりにを感じた身体は、今や冷え冷えと凍えている。
生きて、また、彼に逢えたのに。
責めを受ける覚悟はしている。
ただ後悔していないのだから、弁明することができない。
要するに、ラクスは、怖いのだ。
キラに責められ、軽蔑でもされたら、凍てついた心は割れてしまいそうで。
割れては、困るのに。
たたかうのに、心が砕けてしまったら、妨げになる。果たせなくなってしまうと危惧していた。
受け止める、理性では覚悟している。けれど、本能は逃げたがっている。
ずるい本性が顔を出した。
『ファクトリーのこともありますわ。ですからまだ』
ピーピーッと、ラクスの尤もらしい逃亡のための文句は通信の音に遮られる。
格納庫からの通信は、自動的に繋がりモニターにバルトフェルドの顔が映し出された。
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