TIR NA NOG

□雪解けの抱擁、嘘つきの涙V
1ページ/5ページ








『・・・フリーダム、が』



『あいつが、墜とされるなんて』





ザフト内部からの訃に、心臓が凍りついた。


エンジェル・ダウン作戦の内容と一緒に届いたフリーダム撃墜という情報。





作戦がザフト内部でも最高機密であったため、報告に上がるのが遅れてしまったらしい。


フリーダム撃墜はザフトでも隠しきれない騒ぎになっているらしく、ターミナルより先にエターナルに情報が回ってきたのだ。






ラクスは服の下に忍ばせている指輪にそっと手を置いた。固い感触は、確かにソレがそこにあるということを主張している。








(‥‥フリーダム、が、・・・き、らっ)




母の指輪は今、自分の手にある。


だからキラが、フリーダムが、墜ちてしまった。混乱した頭で唯一纏まった答えはそれだけだった。







『ターミナルに連絡を取れっ!AAの残骸はまだ見つかっていないんだ!詳しい状況を知りたいっ』



艦長席で色を無くしたラクスは座っているだけだった。バルトフェルドが直ぐさま指示を飛ばし、ブリッジが騒がしくなる。


動揺した狼狽えたみっともない姿を晒さないだけマシだった。取り乱してしまったら、周りに不安が伝染する。





クライン派の盟主としてのラクス・クラインはそんなことしてはいけない。



ラクスは溢れそうになる涙を歯を食いしばって必死に堪えた。まだ泣いてはいけない、泣くなと言い聞かせる。





泣いていい場所は、ここじゃない、と何度も何度も心の中で呟いた。






.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ