TIR NA NOG

□Midnight Honeymoon
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Midnight Honeymoon








「――明日からオフだから」




久しぶりにアプリリウスに戻って来た恋人と昼食の席を共にしていた時、唐突にそう言われたラクスは固まった。



平静を装うと紅茶のカップに口をつけるが、微かに指が震えている。







紅茶を飲みつつチラリと向かえに座る恋人を見るが、動揺している自分と違い彼はデザートのミルフィーユを堪能している。


凛々しい軍服姿に苺とクリームをたっぷり使われたミルフィーユは何ともアンバランス。




食べている本人も顔立ちに甘さを残して十分少年で通るからだろうか――と関係のないことを分析してみる。







「‥‥美味しい」



「お返事は?」




現実逃避をしてみたけれど、無駄らしい。
ラクスは唇を引き結び、ソーサーにカップを戻しいつものように微笑んだ。しかし口端が微妙に歪んでいるのは気のせいではない、とラクスは感じる。完璧な笑みを作れないのは、愛しい恋人の前だけだ。






「‥わたくしは、聞いておりませんが」



「うん。さっき決まったから」



「・・・・」




オフを取れるほど自分は暇ではない、と言いたい。しかし、思い返してみれば、今日半日の仕事がいつもより多い。仕事を詰め込むことに眉を寄せるはずの側近も、何も言ってこないのは、まさか、明日からオフだから?とラクスは記憶の中の部下たちの顔を辿る。








「‥あ、の」



「歴訪の後から今まで休みないでしょ?働き過ぎってイザークも眉を寄せてたし。五日のオフくれたんだ」



「!?」



「僕も一ヶ月休みなかったし。まとめてもらっちゃった。ね?だから五日間は二人っきりで過ごせる」



「い、五、日っ」





メディアに出る予定はここ一週間ほどない。


雑務程度ならわざわざ出て来なくてもきっとこなせるだろう。プラントに戻り八ヶ月。




碌な休暇も取っていないから五日ほど休んでも文句は出ない 、とは思う。



だが――五日は、長い。




休暇としての五日間は妥当だ。



けれど恋人の言う“休暇”としては長い。






「ラクスが逃げるから三日が五日になったんだよ。心配しないで例のモノもちゃんと用意したから!」



「・・・・」



「八ヶ月ぶりかぁ。ラクスが宇宙に行っちゃった時もこんなには長くなかったよね。もうホント、あの時なんで食べちゃわなかったのかって後悔した三ヶ月だったよ」



「あ、あの、・・き、キラ」



「――だから今夜から覚悟して」




最後の一口を咀嚼し、キラはナプキンで口許を拭うとニッコリ微笑んだ。それはもう爽やかに、内容がアレなのを忘れてしまう。







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