TIR NA NOG
□Champagne's Temptation
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髪をゆるく結ってドレスアップをした僕の美女が一人一人に挨拶をしてる。
―――僕の美女、が。
Champagne's Temptation
キラは壁に寄り掛かり少し離れた所にいる恋人を眺めていた。時折シャンパングラスを傾けて、中身をちびちびと飲む。
ほんの少しずつ飲んでいるのにもかかわらず、もう何杯目になるのか彼には分からなかった。
息苦しい衿を緩めることもできずに酒を嗜むことに、キラはすっかり飽きていた。
加え機嫌も軒並み急降下。それも綺麗に着飾った恋人が、他の男相手に愛想を振り撒いているからだ。
シルバーのタイトなロングドレスは腰までのラインを引き立たせ、白い胸元がばっちり見える。動く度にスリットの入った裾から美味しそうな太股がチラチラと誘惑してくる。
その眩しい光景に鼻を伸ばした不埒者の一人一人の顔を覚えるのも、こう何時間続いては顔に貼付けていた笑顔もすっかり剥がれ落ちるというものだ。
「・・・浮気者」
ボソリと恨み言を呟いたキラは、グラスに残ったシャンパンを一気に呷る。
その様子を認めたアスランは、話を切り上げ親友の側に駆け寄った。
「――キラ」
「‥‥アスラン、おかわり」
空になったシャンパングラスを親友に押し付けたキラは、じとぉとした重い眼差しで恋人の姿を追う。
「そう機嫌を悪くさせるな。あれも仕事のうちだ」
ボーイにグラスを返し新しいものを受け取ったアスランは苦笑いをこぼしながら、それをキラに渡す。
「お説教なんかしないで」
親友の小言をピシャリと言い捨てたキラは新しいものを全部飲み干す。がしかしその味に眉を顰め、優雅にアルコールを楽しんでいるアスランを睨みつけた。
「何これ」
「ペリエ」
酒を持って来いと頼んだのに、炭酸水を持って来たアスランにキラの機嫌は更に悪くなった。飲んでなきゃやってらんないのに、とぶつぶつ呟き、近くを回っているボーイに向かって軽く手を挙げる。
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