TIR NA NOG

□U-X
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一歩を踏み出すのに、少しだけ緊張した。











「――シーン!何処行くの?」





ロビーを横切った少年と同じ色を纏った少女は声を上げた。騒がしいエントランスでも鮮やかな赤服は目立つ。




シンは良く知った声に呼び止められ、足を止め、振り返った。









「・・ルナ」




「ラクス様の側を離れていいの?隊長に怒られるわよ」






かつて同じ戦艦に乗っていた同僚。



戦時中に恋人となったルナマリア・ホークは今や一緒にイザーク・ジュールの下で働いている。




議長の護衛任務が主なシンは彼女に張り付いていることが多く、イザークの遣いで方々の連絡係を担当するルナマリアとあまり仕事中出くわすことが無い。




サボっていると思われている、と感じたシンは不機嫌そうに眉を寄せる。



これも仕事の一環だ。










「違う。‥ほら、明日だろ?オーブから来るの。その最終確認を港までやりに行くんだ」




「ふぅん。でも何でシンが行くの?私とかが任されそうなのに」





それはシンも疑問に思った事だ。


こういった類の仕事はだいたいルナマリアが担当していることで、自分に回って来ることは今まで無かった。




それを急に上司であるイザークに呼ばれ、護衛任務の変わりに遣いぱしりを命じられた。





オーブとの親交の証という名目もある、今回のプロジェクトは確かに重要だ。


その辺の者に任せられないのも解る。





しかし、それを自分に任せられるのは、不思議だし、引っ掛かる。











「‥‥もしかして、」



「何よ」



「俺、ラクス様に嫌われたかも」





サッと顔色を変えたシンはポツリと呟いた。




頭では先日の会話が何回も流れ出し、グルグルと廻りはじめる。







「急に何?」



「お、俺、ラクス様に厭味言った」



「はぁっ?」



「俺、前に、一人で来たから悪い、みたいなこと言って」






キラさんを置いて帰って来た彼女が気に入らなくて、そう漏らしてしまった。


一緒に居るのが当たり前みたいだったのに、何も言わずに別れようとしたことが納得できなくて。あの時のキラさんの顔が、今でも鮮明に覚えてる。




黙っていたことに罪悪感を覚えるくらいに、キラさんは傷付いた顔をしてた。








「今日、港での仕事が終わったら、戻らなくていいって言われてるし」




大して時間がかかりそうにないのに、その後はオフになっている。


それは帰って来るなとも取れるわけで。



イザークに言われたが、彼の上司は、もちろんプラントを統べる彼女だ。






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