TIR NA NOG
□U-U
1ページ/6ページ
「―――技術者の派遣、ですか?」
通信相手からの唐突な提案にラクスは首を傾げた。プラントとオーブは現在友好関係にあり、定期的に通信での会談の場を設け、復興への相互協力に勤しんでいる。
公式会談となるため決められたことしか話さないが、内容は世界へと発信され、両国の関係を強く印象つけていた。
《ああ。我が国の技術者の軍事利用を止めていただいた礼、とはならないだろうが、何人か友好の証としても送りたい。如何だろう、クライン議長》
モニター越しにカガリに微笑まれ、ラクスは少し考え込んだ。開戦前から両国の間に上がっていた問題。
オーブ戦の折、避難した元オーブ国民の技術者の軍事利用について。
今は復興を優先するとし、新兵器の開発など必要無い。議会での話し合いの結果、国防委員会を押し退けての決定だった。
まだまだ世界情勢は混沌としているため国防を優先させたい国防委員会との話し合いは、ラクスが議長就任時から続き、国防委員会が終に譲歩という形で退いた。
そのことを伝えるための会談でもあったが、カガリの言葉を聞いたラクスは何と無く裏が読めてしまった。
国防委員会はオーブに技術者派遣を条件に退いたのだ。どちらが持ち掛けたかは解らないが、この案件はカガリの中でとても重要な位置にあった。
中立の理念の元にあった国民を、軍事から切り離す。希望があるならオーブに戻る手配も最大限の援助を、とまで申し出ていた。
「議会で話し合ってみます。後日、御返事させていただきますわ」
《良い返事を待っている》
通信を切ったラクスは休む暇なく次の仕事に取り掛かる。この提案の裏に国防委員会が居るのならば、可決されるだろう、と考えながら書類に目を通して行く。
「――議長、ランカスター国防委員長が参られました」
「‥‥通して下さいな」
国防委員会委員長ヘンリ・ランカスター。
評議会再編に伴いその任に就いたのは、ラクスにとって馴染みのある男だった。
.