あんだー
□蜜月の夜、星に願いをT
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貴方を愛してしまった時、わたくしは時計の針が動く音が聞こえた。
それはずっと鳴っていたはずの音だった。
お母様を失い、たった一人、あの小屋で暮らすようになってからずっと鳴っていた音。
でも、気にならなかった。
宿命に立ち向かう瞬間(とき)を告げる、時計の音。
わたくしに与えられたモラトリアムが終える瞬間を示す時計。
わたくしはモラトリアムを終えるのを、ずっと待っていた。
孤独な小屋で、早く、早くとただひたすら待っていた。
在るべき場所に還りたかった。
けれど、貴方に出逢って、それは変わった。少しでも長く貴方と一緒にいたいと、思ってしまった。
早く終わってほしいと願ったモラトリアムを、少しでも長くあって欲しいと思った。
貴方と一緒にいたくて。
終幕の鐘が鳴れば、わたくしは還らなくてならない。
在るべき場所に、宿命の場所に。
一度戻ってしまったら、もう戻れないから。
もしかしたら一生、会えなくなるかもしれないから。
貴方を愛した一人の女として、願わずにはいられなかった。
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