§Secret§
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『……か、彼女?』
『うん。だからフレイとこうやって会うのは今日で最後ね』
にっこりと残酷な笑顔で飄々と言ってるくる相手に、私は呆然とした。彼女なのは私でしょ、とツッコミたくなった。
キスだってそれ以上だってしてきたのに、彼女できました宣言なんてありえない。
けれど初めてではなかった。
キラは不特定多数の女の子と付き合ってたのは事実だし、長続きしなかったのも事実だった。
キラが付き合ってきた女たちの中に稀に独占欲が強いのがいて、一人だけにしてと言うのがいた。
キラはそんな女の言うことを一時的になら聞いて、本当に全員の相手と別れる。でも、誰ひとりとしてキラを独占できた者はいなかった。
すぐにキラの癖が再発して、別れる。そして私の所に帰ってくるから、何にも文句はなかった。
『ふーん。わかったけど、次はどんな女なのよ』
キラが付き合う女には一貫性はなかった。だからいつもどんな女なのか気になった。
『ラクスっていうんだ。今度フレイにも紹介するね』
『わかったわ』
ラクスって女を紹介された時、どうしようもない嫉妬を感じた。
ラクスは違ったから。
言葉に表現するのは難しい。
でもラクスはすべてにおいて違った。キラを私から奪うのは、この女なのだと直感で感じた。
私の愛している人を、この女が奪っていくのだとわかった。
それから何度もキラを誘ったけど、一度として乗らなかった。
二言目には“ラクス”だった。
キラはラクス一人を愛した。
ラクスだけを見続けた。
ラクスはキラを独り占めにした。
キラの愛をたった一人で受けていた。
キラの隣に居続けたのは私だったのに、その場所はあの女に奪われた。私がずっとキラの隣にいて、一番理解していたのは私だった。
だからキラがあの女だけしか見えていなくても、私は諦めることができなかった。
それはずっと長い間続いて、高校を卒業して離れ離れになっても、忘れられなかった。誰かと付き合っても、忘れることができなかった。想い続けるというのは、辛いものだった。いくら想っても、想っても、決して返らない。
私は辛すぎて、一度逃げ出した。
キラとあの女が婚約するのだと聞いた時、私は壊れそうになってしまったからだった。私はキラがいない国に逃げた。
知らない土地で恋をしたかった。
一から始めたくて、何人もの男と恋をした。そして、逃げた国での最後の恋は最低なものだった。
あの恋は、私にはキラではないとダメだと痛感させた。
相手も私のことなど好きではなかった。私と同じで身代わりを探していた男だった。
別れの言葉なんて最低最悪。
『――君は彼女と正反対だ。さようなら』
最低すぎた。
いつのまにか私が他の男のことを好きだということを知られてた。
ぶん殴ってやりたかったけど、あっさりかわされて、冷たい凍りのような目線で見下ろされた。
初めて見る目の色だった。
優しかった彼の本性を初めて見た時だった。彼は優しくなんかなかった。すべては作り物だった。
そんなことも見抜けなかった私は、愚かで情けなかった。
『…こ、れって』
でも今は感謝してるわ。
あの男と付き合わなければ私はキラをあの女から奪うことはできなかったのだから。
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