§Secret§
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「…クライン医師、どうしたんすか?」
ひょっこりと洗面所を覗いたシンは、ラクスの姿を見て慌てた。
「医師ッ!!大丈夫ですかっ」
「‥シ、ン君」
「ま、待ってて下さい!今誰か呼んでっ」
誰かを呼びに行こうとしていたシンを、ラクスは呼び止めた。
原因はわかっていたからだ。
「待ってっ。待って下さい!わたくしは大丈夫ですからッ」
「でも、顔色がすごく悪いし」
「お願いします、誰にも言わないで」
懇願してくるラクスにシンはどうしようもできなかった。自分の身体をわかっているのは、ラクス本人だというのも解ってはいたが、正しい対処をしようとしていないのも解っていたからだった。
「いったい‥何、が」
シンは洗面所内を見回していると、あることに気づいた。
ラクスの顔が洗ったように濡れ、またどことなく酸のような香りが漂っていることに。
すべてを総合してみると、ラクスが嘔吐したという事実が浮かび上がった。
「――医師、まさ‥か」
嘔吐、なんて症状で推測される原因なんてものはたくさんある。
しかし、なんとなく浮かんだそれを、シンは自然と口に出してしまった。
「し‥ん、く、んッ」
シンの言葉を耳にし、ラクスの瞳が絶望に染まる。なるべく広めたくなかったことを、早々に知られてしまい、どう対処すればいいのかわからなかった。
「医師、いつからっ」
ラクスの手首を掴んだシンはその細さに驚愕した。自分が入院している間にもラクスが痩せてしまったのだと思った。
「お願いっ、シン君。誰にも、言わないで下さいッ。誰にもっ」
縋るようにシンに頼み込んだラクスの瞳は本気で、シンは頷くことしかできなかった。
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