§Secret§
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Episode.Z<苦心>
「はい、もうよろしいですわ」
ラクスは聴診器を外してそう言うと、シンはありがとうございますと礼を述べた。
「あと少しで退院できますわね。お仕事が恋しいのではありませんか?」
虫垂炎の術後は良好であることを告げるとシンは笑った。
「はい。早くクライン医師の助手に戻りたいっす!!休みもいいですけど、やっぱり俺は仕事好きっすから」
「はい、お待、ち……」
「せ、医師?」
にこやかに話をしていたと思ったら、ラクスの顔色がいきなり真っ青になり、固まった。尋常ではない顔色にシンも目を丸くする。
「大丈夫ですかっ?!」
ラクスはオロオロとしだしたシンを宥めるが、気分が悪くて堪らなく、何とかやり過ごそうとする。しかし、堪えきれなくなって部屋に備え付けてあるトイレに駆け込んだ。
「ぅ…ッ――ごほっ!」
胸に込み上げていたものをすべて吐き出し、力無く座り込み、ひんやりとした床の温度を感じた。
ドクドクと心臓が激しく脈打つのを感じ、落ち着かせようと手を胸にあてる。冷や汗が額ににじみ、頭がくらくらした。
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