月無夜
□月無夜
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「“アレ”が、ゆーめーな」
「相変わらずだな、キラのバイオレンスっぷり」
キラさんはラクスと呼んだ女性を抱えたまま夜の闇に消えていってしまった。
新人の自分にもわかる。
彼女は自分達“退魔”を行う者たちのなかでもなかなかいないヒト。キラさんもまたそういう類いのヒトだから。
彼らの間には誰も入り込むことはできないだろう。
ラクスさんが深い闇に捕われ、呑まれそうになるのをキラさんは必死に阻止していた。
あんなに彼女に冷たくて接しているけど、カテゴリーDの腕がラクスさんの胸を貫こうとしていたとき、必死で鞘から刀を抜き、“アレ”を使い、カテゴリーDが彼女に触れる前に滅していた。彼女を死なせないため。
ああ、どうか、今夜の明るすぎる月が隠れますように。
そして彼らが安らかな夜を過ごせますように。
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「きっ…ら」
わたくしは貴方に謝ってばかりだわ。もうわたくしなんか見捨てて、違う、もっと魅力的な女の子と遊べばいいのに。
「…っ、らく――す」
死を望み続け、そしてそう遠くなく滅びていくわたくしなんかを想っても、損になるだけだというなのに。
「…死な、せない――ラクスっ、愛して…るんだ」
ああ、またそんなことを。
貴方はそう言っていつもわたくしを困らせる。
「っ…あ――きッ!」
辛いほどの快感が躯を支配して、抜け出せない苦しみが襲う。解放されない快感――キラにいつもこうやって苦しめてもらっている。
死ねない苦しみを与えてもらっている。
「……も、っ――と」
「ら、く」
「もっ、と‥つよ、く」
もっと、もっと、強く。
わたくしに、死よりももっと辛い罰を与えて。
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