月無夜

□月無夜
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カテゴリーD。




人間ではない彼らはそう謂われる。元々は人間だった彼らが、禁忌とされている月光水晶からできた月ノ水を呑んだ、なれの果てだ。




月ノ水は永遠の若さや脳が溶けてしまいそうなくらいの快楽が得られる麻薬。







だが得るものが大きければ、それなりの代償を払わなくてはならないのが世の理。月ノ水は魂を腐らせ、人をヒトでないものに陥れ、化け物に変化させていく。







月ノ水じたい、簡単に手に入れられるものじゃないのに。





カテゴリーDの発生があとを絶たない。月ノ水を創り出せるのは、カテゴリーA。






“彼ら”AからDまでのアルファベットで呼ばれる。






カテゴリーA、“彼ら”創り出す、と謂われているもの。正体不明、姿形すらわからない。






カテゴリーB、カテゴリーAの存在が原因で世の気が乱れ、それが固まってできたもの。







カテゴリーC、カテゴリーBを滅する際に残留思念が集まったもの。カテゴリーCは人間に取り付き、強制的にカテゴリーDに陥れることができる。









“彼ら”はなにが目的なのだろうか。カテゴリーAは、何をしたいんだろうう。












「があぁあああッッ!!」





ああ、いけない。戦闘中に余計なことを考えてたから、後方の敵に対する反応が一瞬遅れてしまった。凶器と化したカテゴリーDの腕が胸へとのびてくる。このままだと確実に胸を貫かれ、心臓をえぐり出される。






霊力の強い心の臓を喰らえば、カテゴリーDでも大きな力を得ることができるから。









ああ、これで終われるんだ。





これがきっと報いなんだ。





この腕がこの躯を突き抜け、心臓えぐり出してくれれば、この月ノ夜から抜け出される。




もう楽になれる。




この腕を避ける理由はない。




“アレ”を解放する必要性が感じられない。









だって、“滅”が願いだったのだから。死を望んで、死のうとしても達成できない。いつも邪魔が入って、唯一の希望なのに叶えさせてもらえない。





でも今夜なら。







だって“彼”がいないから。












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