絶対零ド

□絶対零ド
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第七話―宿命―






「わたくしは、ラクス・セレーナ・ド・ウル・フォーレイル・クライン―――先の第一皇女、ジュリアナ・レイク・ド・ウル・フォーレイルの娘ですわ」





白いドレスを身に纏ったのは、エドワード皇帝陛下のご側室になったばかりの、クライン公爵家の令嬢、ラクス・クラインであった。しかし、その愛らしい容姿の、口からは、信じられない名が告げられ、同席を許されていた貴族たちは耳を疑った。







「陛下は昨日、わたくしの皇位継承権をお認め下さいました。改めて、感謝申し上げますわ」






クライン公爵の自慢の令嬢、皇帝陛下がお見初めになられたご側室のお披露目式でもあった、晩餐会が、違うものになっていく。






「わたくしは、皇帝側室を改めて、皇女として、皇宮に留まることになりました。およろしくね」






皇太子と、決まってはいなかったが、現在の第一位皇位継承権は、暗黙の了解として、エドワードのたった一人の御子、キラ・ヒビキだった。しかし、皇族の直系の姫が現れたとなると、話は別。




本来、皇族の血をひいていないヒビキ家のエドワードが皇帝の位にいることや、その息子が次の皇位を継ぐのはおかしなことなのだ。ただ、先の直系の御子であった皇女ジュリアナに、一人の御子もなく、特例として、今の王朝が続いているのだ。






そのキラも、最も濃い皇族の血を持つミーアとの婚姻なくしては、帝位に就くことは叶わない。





しかし、ジュリアナの血をひいた第一子の登場は総てをひっくり返すことができる。ラクスは成人前であり、皇位継承の資格は十分すぎるほど持っている。皇家直系の者しか持つことができない名と、皇の資格を持つ者だけが所有できる皇玉を持っているのだ。









誰から見ても、次の皇位は、ラクスのものなのだ。







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