§Secret§
□§Secret§第三章
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『ラクス・クライン――貴方は彼女を知っていますよね?ボクが誰かわかりますか』
ウィリアム・クライン。
何故、気づかなかった?
クラインのファミリーネームだけでも十分気にする価値はあったのに、ラクスのほうだけに意識が集中しすぎていたのか。
あの男の子の顔。
茶色のくせっ毛に、紫の瞳。
小さい頃の僕に、そっくりじゃないか。
『ラクス・クラインは、ボクの母親で、貴方の妻だったヒトでしょう?キラ・ヤマトさん』
あの強い眼差し。
顔は僕そっくりなのに、ラクスが持つ強さがあって。
混乱した。
彼が間違いなくラクスの子どもで、父親が僕であると突き付けられたからだ。
そうなると、ラクスはクラインの本家の娘であって、それでっ。
彼女が自由になれない理由が、クラインなのだろうか。
あの、ウィリアムと名乗った、僕の子ども。
ラクスは僕にずっと内緒にしてきたことって、これ?
彼の年齢から見て、僕と別れた時にはもう妊娠していたのだろう。
何故、僕に何も言わなかった。
何故、隠していた。
別れた原因が、僕にあったから?
君は何の理由も聞かないで、僕の家から離婚届を奪って、サインを偽造してまでして出したくせに。
どうして一人でなにもかも背負ってしまうんだ。
秘密が多いと、ここまで簡単に壊れていってしまうのか。
『一つ、聞きたいんですが』
『…ラクス・クラインを、――母をまだ愛していますか?』
強い紫の瞳。
離れていくラクスを止めることができないのなら、足掻いてみてもいいかな。
また君と愛し合えたのだから、離す気はさらさらない。
君と離れ、孤独になるのはごめんだよ。君が必要なんだから。
『――ボクと手を組みませんか?……ボクは母様を苦しめるモノは、決して赦さないッ』
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