The world of despair
□The world of despair
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act.14《裏切り》
――カツン、カツン
白いワンピースは、暗闇の中でぼんやりとした光をもち、着ている人物の美しさを際立たせていた。
彼女の気配に気付いたのか、対象的な黒いローブを頭からすっぽり被った女王は立ち止まった。
「……何ようだ」
冷たい声が、暗い回廊に響く。
「――目標を発見いたしました、クイーン。明日、彼女とアウルたちを向かわせます」
フワリと美しくも恐ろしい笑顔を浮かべるのは、美しく豊かな髪を一つに高く縛り上げている、ラクス・クライン。
「お前は、…行かぬのか」
「わたくしは、本部を叩きます。そのうちに、上手くコトが運ぶとよろしいのですが」
「――お前の計算、誤ったことなどないわ」
フンとつまらなそうに女王は鼻を鳴らし、バサリとローブを翻した。
「そんな、わたくしも人間ですわ」
ラクスは照れたように笑う。
女王は相変わらず冷たい瞳だったが、一瞬、彼女が纏っている空気が軽くなった。
「速く我がもとへ帰還しなさい、第一王女……いや、我が娘よ」
ローブの間から、すらりと細く白い腕を伸ばし、ラクスの頬を優しく撫でた。ラクスは瞳を閉じ、ゆっくりと頷いた。
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