絶対零ド

□絶対零ド
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「あ・れ・が――次の皇太子、わたくしの夫となる方なのですか、お母様」



ドカッとふかふかのソファに寝転がり、自慢の豊かな桃色の髪をクッションに広げながら、目の前で優雅に紅茶を飲んでいる母親に、ミーアはがっかりしたような口調でこぼした。






「ミーア、……そうね。殿下には少し皇族の気高さというものが感じられないわ――彼には、今の王朝には資格がないのですから仕方のないことかもしれませんね」




「……。わたくしには関係ありません。わたくしは与えられた役割を、宿命を果たすだけですわ」




澄んだ水色の瞳には力強い意志がはっきりと見え、ルレリアは満足げに微笑んだ。




「……お母様、なぜ皇帝は皇族の血族との交わりを急いでおられるのですか?今回の婚約だって」





ミーアの問いにルレリアはカップをソーサーに戻し、机に置くと、口を開いた。






「――本来、帝の地位につくには、血が必要、というのは知っているでしょう?…先帝であった叔父様が御崩御され、正当な皇位継承者であったジュリアナ殿下が帝の地位に就かれるはずだったのですけれど、ジュリアナ殿下と強引に婚姻関係を結んでいた今の皇帝陛下へと、皇位継承権が一時移ってしまったのよ。――婚姻関係を結んだのはジュリアナ様がまだ16歳で、成人になっていなかった。そこで特例として、中継ぎの皇位継承がなされたの。22歳というジュリアナ様がご成人なさるまでの、期間限定の皇帝。それが今の皇帝陛下なのよ」




「……けれど、ジュリアナ様は」




「ええ。皇位継承目前に…」





ルレリアは辛そうに瞳をふせた。ミーアはあまり見ることのない母の苦渋ともいえる表情に、同じように辛そうな顔つきになった。






「では、今の正当なる皇位継承者は誰になるのですか?」




皇位継承の絶対的理由は、皇族の血を最も濃くひいていること。

そして成人前だということ。




兄弟がいる場合でも、一番濃い血をひくものは第一子ということとなり、男女関係ない。





「……血でいえば、わたくしの娘である貴女よ、ミーア。貴女がキラ殿下と結婚して、子どもを産んだなら、その子が第一位皇位継承権を持つの。その間の中継ぎとして、キラ殿下は皇位を継承できるわ」







「ジュリアナ様のに子どもがいたら、どうなるのです」





「――もちろん、その方こそが、次の皇帝になられるわ」







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