絶対零ド
□絶対零ド
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「ららーらら、らーらら」
小川のせせらぎを聞きながら、足を川の中に入れて涼む。なんだか気持ちよくって、歌を口ずさんでみる。風の流れが木の葉の間を通り過ぎ、さやさやとした安らぎの音を奏でる。ラクスにとって、ここはキラも知らないお気に入りの場所だった。
―――ガサガサ
「定時ですわね」
川の中に突っ込んでいた足を出して、持ってきていたタオルで足を拭くと、靴をはいてスカートの土を掃った。そしてしげみの中に入って行った。
「婚約ッッ?!そんな勝手にっ」
一通りの公務を終えたキラは、父である皇帝に呼び出され、プライベートルームに来ていた。優雅にワインを飲みながら婚約について告げられたキラは、一瞬にして頭に血が上った。
「そんな、いきなりどうして」
「相手は侯爵の娘だ。彼女の母親はジュリアナの従姉妹にあたる方らしい。皇族の血を強くひいている――これ以上な縁談はないと、私は思っている。これからは皇子の婚約者として宮に入られるのだから、これから出かけずに宮に留まるように」
有無を言わせない父の言葉にキラは何も言えずに、ただ黙って立ち去った。
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