絶対零ド
□絶対零ド
1ページ/3ページ
第一話―記憶―
『おかあさまっ』
『お願いっ――逃げてぇっ』
暗い記憶。
思い出したくもない記憶。
あの時の辛さは今も忘れることができない。
その辛さは憎しみに変わり一日一日と深くなっていった。
「――ラクス」
「…き、ら」
眩しい朝日と恋人の声で目を覚ますわたくしは、なんて幸せなんだろうか。過去の忌まわしい記憶が嘘のよう。
「おはようございます」
「おはよう。ラクス」
恋人のキラは、いつも眩しい笑顔と溢れるほどの愛情をくれる。
3年前、森で迷っていた彼を街まで案内してからというもの、週二日ほど会いに来てはわたくしの仕事を手伝ったりと、2年前に告白をされ付き合い出している。キラは週三日ほど会いに来てくれる。街で仕事をしているから、毎日は会えないけれど、それ以上のものをもらっている。
「大好き、大好きだよラクス」
「はい、キラ」
優しく抱きしめられ、冷たい心が満たされていく。嬉しいのに、涙が零れてしまった。
「わたくしも大好き」