Short Novel

□眠らないオヒメサマU
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「いかがいたしましたの?――何か問題でも?」



あえて事務的な言葉を淡々述べ、キラの言葉を待った。



すると、キラはとろけるような満面の笑みで言った。



「…荷物の整理が終わったので、仕事、下さい」



手の平をヒョイッと出され、ラクスは必然的にその手の平に視線がいった。


言葉の前に手の平が出され、キラの言葉を全て聞き取ることができなかったラクスは、前半部分言っていたことを思い出し、手の平からキラのデスクに視線を移した。




「……」


キラのデスクには、ほとんど…と言っても過言ではないくらいに物がなかった。



だいたいの者はプライベートの物、例えば家族写真や恋人の写真をコルクボードに貼り飾ってあったりするのだが、キラのデスクにはそういった物がまったく!いっさい!見受けられない。



あるのは、仕事用…会社から支給されているノートパソコン一台だけであった。



あまりの地味……というより侘しさにラクスは言葉を失った。




デスクばかり凝視しているラクスに気付き、その心の内が手に取るように分かってしまうキラは、口元を吊り上げ微笑むと声色を少し下げ、ラクスの耳元で囁いた。





「どうせ直ぐに取締役になるんだから、私物なんてイラナイ…でしょう?」


「…―っ?!!」



取締役になれば、個室が用意される―――ラクスもこのことは周知の事実であった為、知っていた。




だがそんなことより、挑発的なキラの言葉がラクスの“負けず嫌い”を深く刺激した。






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