The world of despair
□The world of despair
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ニコニコと始終笑顔で言うカガリ、僕は意味が分からなくて首を傾げた。彼女は何を言ってるんだ?彼女の言い方は、未来が見えているようだ。ラクスの気配はない、が。
「ま!見舞いの必要はないからな」
「えっ、なん……」
ガラリ。
「登校してきた、からな」
カガリは苦笑いを零しながら、冷めた表情で教室に入って来たラクスの元に駆け寄った。
「ラークースー?」
「おはよう、カガリ。…元気です」
膨れっ面で駆け寄って来たカガリに、ラクスは気まずそうに呟いた。登校して来たことに、不満があるのは分かっていたからだ。
「…昨日は酷かっただろう?そ、の薬だけじゃ不十分―――」
「…今回のは、新薬です。前のよりも効くものですので、ご心配は無用ですわ」
眉を歪め、不安げな表情を浮かべているカガリを安心させるように微笑み、カガリの手を取り優しく握った。
「……ん。無理は、すんなよ」
「はい、心得ておりますわ」
キュッと握り返してくるカガリに、ラクス不器用ながらも微笑んだ。
仲の良い姉妹の様子を遠巻きに見つめていたキラとアスラン。近寄りがたい雰囲気が漂い、様子を伺っているのだ。けれど、近寄らない原因はもう一つあった。
「…アス、ラン」
「ああ、すごいな――」
アスランは感嘆の声を漏らした。厳しい訓練を施されている僕たちは、人の気配には人一倍敏感になっていた。空気の流れや、人の吐息のさいに生じる小さな奮えにも反応ができるのだ。これは暗殺から自分の身を護ったり、突然の奇襲にもすばやく対応するようにと訓練されたものだ。僕やアスランに気付かれずに近寄ることは、ほとんど無理に等しい。
けれど彼女はどうだろう?
いくら学園内は多少は安心できる場所であったとしても、そこまで緩めているわけでもない。この間のように、コーディネーターたちがいつ仕掛けて来るかも分からない現状に、彼女の気配に気付かないはずがない。
だとすると、彼女の気配の消し方が恐ろしく上手く、そして戦闘の天才だということだ。
これなら体が弱くとも、フレイを翻弄できたことが頷ける。もし、彼女の体が健康であったならば、パワーは計り知れない。
キラはごくりと喉を鳴らすと、平然の様子でいるラクスに近付いて行った。
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