Short Novel

□何も言わない、君へ
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「また、歌聞きたいなー」




「……いち教師としての発言とは、到底思えませんわね」






キラの表情は恋する乙女といったところだろうか、一応教師なのだから生徒に好意を持ってはいけない。ミーアにしてみれば、以前から彼のことをカッコイイ!と絶賛していたから、気にしはしないだろうが。






「ま、頑張って下さいまし――」



「どうもー」






彼女は相変わらず冷めた瞳で興味なさそうだった、歌姫が自分の妹だって聞いても顔色は変えなかった。





どうしてだろう?歌姫のことで、僕の頭はいっぱいだったが、彼女のことが気になり、歌姫のことを一瞬忘れてしまった。





彼女は、どうしてあんなに冷めた瞳を?






せっかく、綺麗な瞳なのに―――










――――――――






「あ、おはようございます、ラクス様っ」




「ご、ご機嫌麗しゅう、ラクス様!」






颯爽と歩くラクスの姿は、生徒会長としての威厳にあふれ、通り過ぎるものは慌てて頭を下げる。






「ごきげんよう、皆様――」




ラクスは無表情のまま、通り過ぎる。


無表情ではあるが、生徒たちは真っ赤になった。愛想がないラクスは、不人気だと思いきや、その冷たさがツボらしい。

きゃあきゃあと背後で声が上がる中、ラクスは真っ直ぐ教室を目差した。











○●○●○●○




「ね!クラインさん、ピンチヒッターしてくれないっ?!」





昼休み、昼食を終えたラクスにクラスメートが話しかけてきた。生徒会の書類を一度、机上に置くと、お願いポーズをしているクラスメートを見つめた。






「…いったい、なんのでしょう?」



「私たちのクラブ!コーラス部なんだけど、もうすぐ文化祭でしょ?」





コーラス、ラクスはその単語を聞いてピシリと固まった。クライン女学院は10月に文化祭をやらない。3年生も参加できるようにと、5月頃にやるのだ。クライン女学院は、幼稚舎から大学までの一貫高。5月に文化祭があったとしてもなんら支障ないのだ。







実を言うとラクスも生徒会に入る前は、コーラス部に所属していた。中学のころから、コーラスを続けていた為、生徒会のさいに辞めなくてはならないことは顧問の先生も非常に残念に思うほどだ。そのことを知っているのか、ピンチヒッターを頼んできたらしい。ラクスは、置いた書類を持ち直すと相変わらず冷めた声で返答した。








「申し訳ありませんが、当日はわたくしは生徒会の仕事で手一杯なのです。他の方をあたって下さい」






「あら、そうなの。残念だ、わ」






残念そうに、眉を下げたクラスメイトにラクスはチラリと視線を向けるが何事もなかったように、書類に視線を戻した。





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