§Secret§
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かなりの動揺を見せるラクスに、ウィルは黙って見つめる。
真っ直ぐな、曇りのない瞳は、ラクスの大好きな一つだが――今はとても、そうは思えない。
責める様子がないのは十分、承知しているものの――ウィルには、キラの事を出来るだけ知ってもらいたくなかった。
まだ僅か7歳の子供には、話す事ではないと、ラクスは判断していたからである。
大人になり、ウィルにも大切な人ができて――望むのなら、話してやろう…とは考えてはいたが。
些か、まだ早過ぎる。
だが、ここでごまかしたら、ウィルは何をするかもわからない。
不幸なことに、容姿はあちらに瓜二つ――そしてこの時代……調べる方法はいくらでもある。
素直になるか、ごまかすか――相反する、二つの思いに、ラクスはすっかり悩んでしまい、黙り込んでしまった。
何も言わず、黙って見つめていたウィルも――母親ゆずりな聡明さで気付くと、眉を小さく歪めた。
(ラクスに、こんな顔をしてもらいたくなかんか――ないのに!)
今更ながらに、己の軽々しく口走った発言に嫌悪する。
下唇を噛み締め、自分自身を叱責すると瞳を揺らすラクスに言葉を紡いだ。
「っ――――なーんて。ボクの父様は御祖父様だし」
「ウィ…ル」
縋るような瞳は普段凛々しいラクスから想像できないくらいに、弱々しく頼りない。
空気を変えるべく、ウィルは微笑むと話題を変えた。
「ね、ラクス。お腹空いた!一緒にご飯食べよっ」
小さな手でラクスの手をとると、朝食が置かれた場所まで連れていく―――ラクスもウィルの気遣いを察し、淡く微笑んだ。
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