TIR NA NOG
□V-Z
3ページ/4ページ
―――――――
ルイ・ランカスターと同室になり、日常生活の一部を共にするようになって早3日。キラが彼に抱いた印象は初対面の時と変わらず、似ている、だった。
同室の寮生とは何かと行動が重なるため、ルイとの時間は多い。入学式で友人になったニックとセイがそこに加わることもあったが、概ねルイが隣にいた。
「――ふわぁっ、やっと終わった。キラー飯行こうぜ」
まだ体術関連やMS操縦といった実技が始まっていないため講義内容は座学中心である。
軍の規律についての授業は眠くなるセイが欠伸を噛み殺しているのをニックが苦笑いをして見ていた。亡くした友人、トールにも似た人懐っこい性格のセイに、キラの頬も綻ぶ。
「うん。…ルーイー、お昼ー」
食事の面子はルイを含めた4人になっているため、キラは彼を呼んだ。
「いま行くー」
キラの声に姿は見えないルイから返事があった。
「またか」
「まただね」
「そうだねー」
順に、セイ、ニック、キラである。
授業後に“そう”なるのはいつものことで、セイとニックはまたか、と肩を竦めた。キラは興味がないため適当に相槌を打つ。
「ルイ君、行っちゃうのー?」
「私たちも一緒していい?」
「まだお話してたいよー」
――ルイ・ランカスターは今やアカデミーのアイドルと化していた。
淡く朱色がかかったブロンドに青い瞳、整った甘い顔立ち。性格も社交的で優しく、家柄も良いとなれば女子たちの注目を集める。
入学式でラクス・クラインと親しげに抱擁を交わしていた姿は誰もが知るところとなり、男子の興味も引いていた。
「いいよなぁ」
「うん」
恋人がいない男子たちから見れば、女子に囲まれる姿は羨望の的だ。食堂に移動するだけでぞろぞろと女子を引き連れるルイに数日で慣れたセイやニックも、独り身には何かと染みる。
食堂で定食を受け取り席に着けば正面の空いた席は女子たちで埋まってしまう。
一見すると4対大勢の食事会みたいな光景も毎度となると気にならないから不思議だ。
「キラも羨ましいだろ?」
セイは食事中でもモテモテ、なルイの様子を横目にキラの肩を叩いた。独り身同盟参加者募集に乗り出したのである。
「僕、恋人いるから」
しかしキラはにっこりと募集を断った。
「「「えっ?!」」」
友人の恋人宣言に驚愕の声を上げたのは、セイやニック――だけではなかった。ルイの取り巻きである女子たちも漏れ無く話を中断させ、キラへと視線をやる。
「キラ君彼女いたのっ?」
「嘘っ、知らなかったー!」
「アカデミーの子ッ?」
驚くこと勿れ。肉食である彼女たちにとって、キラもまた狙っていた獲物だったのだ。
「お、おまっ!」
「いつから?」
うろたえる面々を前にキラはマイペースにサンドイッチを摘みながら微笑んだ。
「もう長いよ。地球からのお付き合い☆」
輝かしい笑顔は恋人へのキラの想いが表れているようで、一方的に惚気られた一同は見事に無言になった。
「――ごちそうさまでした」
最後のサンドイッチを飲み込んだキラはどこまでもマイペースである。
ヘリオポリスを最後に学生生活からすっかり遠退いてしまっていたキラは、数年ぶりの生活をそれなりに楽しんでいるのであった。
.