NO NAME
□Y-X
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わたくしは子を成すことはできないから、代わりに彼らを愛そう。キラの血を継ぐ可愛い双子を。きっと二人がわたくしたちを家族にしてくれる。
夢見ていたのと少し違ったけれど望んだ光景が手に入るのなら。そう思った。
それなのにルイとメアリは居無くなってしまった。キラの子ではないと言っていたけれど、関係なかった。
偽りでも、家族だったから。
一緒に食事をして、同じベッドで眠り、庭で遊んで。キラも一緒に居て。
わたくしが欲しかった光景があったのだ。
それが取り上げられてしまう。
そんなこと堪えられない。
いくら嫌だと言っても彼は聞いてくれなかった。わたくしの我が儘をいつも聞いてくれるキラが、頷いてくれなかった。
「‥‥っ」
子どもをつくろう。僕たちの。
どうしてあんなことを言うのだろう。
わたくしのことを愛してなんかいないのに。子どもが嫌いなのに。要らないのに。
わたくしが欲しくても諦めることしかできなかったことを何故、あのように簡単に言えるのだろう。
わたくしがどんな思いでルイとメアリを受け入れたか。考えてもくれないのだろうか。
「・・・くる、しい」
何も食べていないのに、気持ち悪い。
胸が苦しい。痛い。
どうして、どうして。
キラは子どもは要らないと言った。
でも今は喜んでいる。
わたくしを愛していると言う。
過去と現在、どちらのキラを信じればいいのだろう。どちらが嘘なのだろう。
どうすればいいのだろう。
どうすべきなのだろう。
「………いた、い」
胸が痛い――心が痛い。
過去のキラを思い出すのも、現在のキラを思い出すのもとても苦しい。
――苦しくて、堪らない。
「・・・・・」
横になっていたラクスはゆっくり起き上がった。呼吸を詰めて周囲の音を拾う。
シホは買い物に行く時間なので屋敷に居ないし、キラは仕事で執務室にこもっているはず。
誰ひとりの気配も物音もしない。
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