NO NAME

□Y-X
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「・・また、少し‥眠ります」



「ラクス?」



「‥‥ごめんなさい」






妻の声が沈んでいる。心配そうに眉を寄せたキラを直視できずラクスはベッドに沈み込んだ。








「‥なら、僕も一緒に」



「・・・お仕事が、あるのでしょう?」







妊娠が分かってもう一ヶ月。それまでは見逃していてくれたカガリも執務の多さからキラを復帰させた。


それでも以前のような徹夜を強いるような量ではない。ラクスの傍に居たいという弟の願いをできる範囲で邪魔しない量しか送って来ないのはカガリの配慮だ。





それが解っているだけにキラも突き返すことができない。いつもなら昼間ラクスが眠っている間に片付けるが、買い物を優先してしまったためまだ終わっていなかった。


仕事をしなければならないと承知しているが、妻の様子が可笑しいため離れたくなかったのだ。










「――ラク」




「‥ごめんなさい」






背を向けてしまったラクスに、キラは何も言えなくなった。傍に居てほしくないという意思表示にズキリと胸が痛くなる。


信じさせてほしいと涙ながらにこぼしてからラクスとの距離は縮まっていた。




しかし妊娠が分かってからまた離れてしまった、と感じていた。言葉では何も言われていない。けれど判ってしまうのだ。


伏せられた瞳や背中から伝わってしまう。









「…おやすみ、ラクス」





キラはラクスのこめかみに軽いキスを落とし寝室から出て行った。扉を閉める時、隙間からベッドの様子を覗ったが動いた様子はなく、無言の背中があるだけ。







「・・・・」





何がそんなに妻を辛くさせているのか。


キラは分からなかった。





シホが眉を顰めるほどベビー用品を買っていても、それが間違いだとは思わない。


ラクスを辛くさせている一因になっていると気づけていない。




それは妻の様子にとても不安になるのと同時に、妊娠を喜んでいたのだ。


五月蝿いだけで弱い子ども嫌っていたのに、愛する女(ひと)が自分の子を身籠ってくれた。それがどんなに胸を満たすのか、キラは医者から妊娠を告げられた時に感じた。






泣きそうになるくらい嬉しかった。










「‥‥‥ラクス」





まだ噛み合えていないことに、キラは拳を握り締めた。






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