NO NAME
□Y-W
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レッドやピンク、オレンジにイエロー、グリーンと、カラフルな一口サイズの見た目が愛らしい菓子だ。気に入れば機嫌が最悪の親友も少しは落ち着くだろうと考えていたのだが、頼みのラクスは困ったような顔を浮かべた。
「ラクス様?」
「ごめんなさいアスラン。わたくし甘いものが食べれなくなってしまいましたの」
「え?」
「急に甘いものが苦手になって。食べても戻してしまいますから、持って帰って下さいな」
苦笑いをこぼすラクスの顔色をまじまじと観察したアスランは、微かに悪いと感じた。もともと白い肌をしているが、青みがかかっている。
「医者には診てもらったのですか?」
「大したことはありません。ここ数日、少し熱っぽいだけですの」
「熱があるんだからとっとと帰って」
アスランがあまりにも妻を見るのでキラの声はいつにも増して刺々しい。
「キラ」
機嫌の悪い夫をたしなめるようにラクスはキラの手に自分の手を重ねた。
「‥ラクス」
妻の手を握り返したキラは顔色の悪いラクスの頬をもう片方の手で撫でる。
その所作は優しく、愛しいという想いが滲み出ていた。話には聞き、本人よりも早く気持ちに気づいていたアスランでさえ、目を瞠った。
「ラクス、大丈夫?」
「ええ。少し眠いだけですわ」
「‥‥‥」
見ているこちらが恥ずかしくなるくらいにベタベタしている義弟夫婦を見守っていたアスランだったが、二人の会話から何かを感じたのか首を横に傾けた。
何か、ひっかかる。
「休んだほうが」
「はい、そうします」
親友がつっかえたもやもやと一人格闘しているうちにキラは妻を抱いたまま立ち上がった。
「じゃ、そーゆーこ」
「!ちょ、ちょっと待て!」
「……は?」
一度、温度が下がった。義弟のあまりの冷たい眼差しに鳥肌を感じながら、アスランは思い付いたことを確かめるため、ラクスの隣まで駆け寄る。
キラが嫌そうに身体を捻り、妻をアスランから隠そうとするがめげない。
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