NO NAME
□Y-W
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「――帰れっ!!」
「………」
これは、デジャヴュか。いや、つい先ほど、シホにも言われた言葉だと、一人ツッコミながらアスランは一ヶ月ぶりの親友の顔を見上げた。
機嫌最悪、しか浮かばないキラの顔に、アスランは冷汗を流す。こういった時のキラは本当に手が負えないと幼なじみや騎士時代を経てよく知っているのだ。
「‥キ、キラ」
「何しに来たわけ?とっとと帰って!」
恐い、の一言に尽きる親友の形相にアスランは久しぶりにビビった。帰れるものなら帰りたいさ、と声にならない悲鳴を上げて、とりあえず笑顔を取り繕う。
「ひ、久しぶりだなキラ」
「か・え・れ」
「………」
こんな酷い扱いを受けるのは久しぶりなアスランは少し傷ついていた。早く帰って可愛い天使に癒されたい、と思うが、収穫無しでは妻も冷たくなるのは明らかだ。
退くに退けない、退路は無いアスランは弱腰の自分を奮い立たせる。
「あ、の……ラクス様のご様子は‥ど、どうだ?陛下から催促されて」
「・・ちっ」
「っ‥‥その、一目お会いしてから帰りたい、の、だが」
ギロリ、と射殺されそうな眼差しにアスランは背筋を伸ばした。荒れた野生の獣すら畏縮させてしまうような親友の眼光の鋭さに危険危険と本能が訴えてくる。
「元気だとでも言っておけばいいじゃん。ホントに使えないね」
「‥何かあったのか?」
キラをここまで神経質にさせている原因は、妻であるラクスが必ず関わっているだろう。
しつこいアスランに苛々がおさまらないキラは何かを言おうと腰を上げた時だった。
控え目なノック音が響き、ラクスがシホを連れ応接室に入って来たのだ。
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