NO NAME
□Y-V
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『っ』
ラクスはキラが持つ酒瓶に手を伸ばし、中身を一気に呷った。苦いまずいそれを、体内にすべて流し込んでしまう。
直ぐに身体がまた熱を帯びた。
視界がグラグラ揺れて、頭に靄がかかる。
『そんな飲み方、身体によくないよ』
ボゥとした妻から空瓶を取り上げ床に転がしたキラは意地悪い笑みを浮かべ、ラクスの腰を撫でた。
別の手は太股を持ち上げて躯を密着させる。
『あ、ん』
『?』
ついさっきと反応が違うことにキラは目を丸めた。虚ろな瞳の妻が見上げてくる。
『ラクス?』
『あ、つい』
『・・・』
『あつ、いの……キ…ラ』
キラはいつものようにラクスの肌に手を這わせた。
『んんっ』
いつもはくすぐったそうに眉を寄せるだけの場所なのに、悩ましげな声が漏れている。
良いものを見つけた、という顔で笑ったキラは妻を近くのソファに押し倒した。
シャツを乱暴に脱ぎ捨てズボンの前を寛げると、ラクスに覆いかぶさる。
赤く熟れた唇を嘗めてそのまま口の中に舌を滑りこませる。舌と舌を合わせると酒の芳香が香った。
『ん、んっ…!』
長いキスの間に胸や下半身を触られラクスは悶える。涙目で息を乱した妻に見上げられたキラは自分も興奮してきたのを悟った。
裸体を惜しみ無く晒しても清らかなラクス。
聖女として育ってきた彼女に生々しい性というのを教え込んでも失われない清純さ。
それがたったこれだけのことで、簡単に塗り替わる。強烈な性の香を発し、淫らな目で誘惑してくるのだ。
その変わり様がキラは面白かった。
『酒で感度が上がってる』
とろりとしたモノを感じたキラは、ラクスの脚を抱えて中に入った。最初から強く腰を振り、今まで一番の快感を味わう。
どの女でも経験できなかった別格の悦楽に、キラの息も上がっていく。
『ああっ』
抱き心地の良い躯、耳元で啼かれる声、快感に酔った顔。
妻のすべてが自分の欲を煽っているのをキラはわかっている。
無理矢理に結婚させられたけれど、これだけは感謝していた。
それほど気持ちがいいのだ。
もう何も考えられなくなってしまうほど気持ち良くて、頭が真っ白になる。
『っん……はぁ――ホント、に、最高・・の躯だ、よっ』
『あっ、んんっ』
嬌声に混じって悲鳴が上がる瞬間。
心を刔る言葉。
強い快感に揺れながら、ラクスは訪れるはずの傷みが無いことに気づいた。
いつもなら苦しくて苦しく堪らなくなるのに、全然、何も、感じない。
心が痛くない。
(………な、ぜ)
不思議で仕方ないラクスはぼんやりと自分の上にいる夫を見つめた。快楽に眉を寄せて汗を滴らせている姿に躯の奥がキュンと疼く。
『っは、‥‥どうしたの?酔った?』
『‥‥ふ、ふふっ』
優しくされている、と勘違いしてしまいそうなくらい丁寧な仕種で夫に頬を撫でられたラクスは急に笑いが込み上げてきた。
夫が自分と結婚したのは仕事だったからと解っているのに、そう勘違いしそうになっている己が可笑しかった。
期待している自分が哀れで愚かで、嗤いが止まらない。
『ご機嫌だね、ラクス』
ええ、愉しいわ。
ここに馬鹿な女が居るのですもの。
『・・キラ』
ラクスは夫の首裏に腕を回し、唇を引き寄せた。自ら口づけるのも舌を絡ませるのも初めてだった。
直ぐに主導権は奪われてしまったラクスは躯から力を抜いて快感に身を任せる。
すべてを投げ出して快楽に浸るのは心地が良かった。傷みが無いだけ、気持ちが良かった。
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