NO NAME
□Y-U
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姉夫婦の居る部屋は既に使用人の姿はなく、キラはまだ淹れられたばかりの紅茶を一口飲んだ。朝方出産したというカガリもクッションに凭れて座るほど回復しているらしい。
生まれたという甥っ子は揺り篭の中で大人しく眠っている。
「――カガリ。一先ずお疲れ様」
「手紙を見てこんなに速く来るなんて、珍しいこともある。何かあったか?」
再三の呼び出しも平気で無視をするのが常の弟がこうも速く姿を見せたことに、カガリは単純に驚いていた。
故に何かあった、と感じる。
「ラクス様は?お連れしなかったのか?」
アスランの問いにキラは苦笑いをこぼす。
彼と会うのはあの双子の一件以来だった。
双子の件が片付いたという書面だけ送り、後は屋敷に篭っていたのでその後のいきさつなど一切知らせていなかったのだ。
「そのことも含めて話があるんだ」
「なんだ。ラクスが好きと気づいたのか?」
「…………」
「ん?違うのか?では、子ができたのか?」
恥ずかしいがラクスの状況を上手く説明するには、自分の気持ちを話した上で進めるのが速い。そう覚悟していたというのに、姉は今なんと言った。
「なっ?!」
「お!ついにできたのか?これは陛下にもお伝え」
「ち、違うからっ」
ここで馬鹿な国王まで登場したら更に厄介なことになる。キラは慌てて否定するが、頭の中では姉の言葉が響いているせいか頬が熱くなった。
「?ではなんだというんだ」
「・・・いつから、知って、たの。そ、の…僕がラクスを……すき、だって」
普通に話すより恥ずかしくなってしまった。
初心な少年のように顔を真っ赤に染め俯いて話すキラの切れ切れの言葉に、カガリはアスランと顔を見合わせる。
こんな彼の姿を二人は知らない。
「し、…シホから、聞い…た?」
モジモジして、誰だコイツ、がカガリとアスランの共通した印象だった。
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