NO NAME

□Y-T
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カラン、とカトラリーが皿にあたって高い音が鳴った。その音に食事をしていたキラと、給仕をしていたシホが動きを止める。








「‥‥‥‥」





フォークを落とした当人であるラクスはぼうとしたまま焦点の合わない瞳で綺麗に盛りつけられた食事を見つめている。









「・・ラクス様?」




あまり手がついた様子のない食事に眉を寄せたシホの心配する視線から逃れるように、ラクスは立ち上がった。









「‥気分が悪い、の。お部屋で休みます」





そう言って食堂から出て行ってしまった主人の背中を見つめシホは溜め息をついた。


双子の一件から既に3ヶ月が経っている。


あの一件以来、ラクスの精神は不安定で食事の量も激減していた。








「ラクスっ」




慌てて妻を追い掛けようと立ち上がったもう一人の主人の襟をシホは無言で掴み、椅子に問答無用で戻す。









「・・どちらに行かれるのです?まだお食事は終わっていませんよ」




シホの冷たい声音と視線にキラは一瞬息を詰めるが、直ぐに眉を寄せた。








「どちら、って、ラクスの所に決まってるでしょ」



「いけません」





ぴしゃりと言い捨てたシホは、椅子から浮き上がっていたキラを再び押し戻す。








「シホっ!」




邪魔をするシホにキラは非難の声を上げが、またきつく睨みつけられる。


早く妻の所に行きたいのに、今のシホを乗り越えるのが困難に思えるほど怖かった。






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