NO NAME

□Y-T
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「‥‥ラクスさま」




ラクスを追い掛けることを辞退させ、執務室に放り込んだシホは寝室の扉を開けた。


寝台の上に横たわっている主人を確認したシホはカートを室内に入れる。





カートの上にはティーセットやスコーン、クッキーなどがのっていた。昼食をほとんど口にしなかったラクスの好きな物を選んで運んできたのだ。







「ラクス様、ご気分はいかがですか?」




ベッドの脇に膝をついたシホに気づいたラクスはゆっくりと首を動かす。








「・・し・ほ」



「紅茶やお菓子を持って参りました。何かお食べになりませんと」



「‥シ、ホ」






ラクスは起き上がるとシホの肩に手を置いて凭れかかる。肩口に顔を寄せ、弱々しく呟いた。







「‥ちょうだい。・・・紅茶を、ちょうだいっ」



「……ラクス様」





紅茶はある。けれど主人の所望している紅茶ではない。


シホはラクスの背に枕を重ねて置き寄り掛からせ、紅茶を淹れる。ぼんやりと座っているラクスにティーカップを渡した。





紅茶からは湯気が立ち、部屋に香りが広がっていく。



揺れる水面を虚ろな瞳で眺めてからラクスはゆっくり口をつけた。






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