絶対零ド

□絶対零ド
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第二十八話―貴い柵―










「……アス、ラン?」





久しぶりに再開した昔馴染みの顔つきは、見知った物ではなく、カガリは混乱した。


双子か、よく似た他人のような気がしてならない。それほどまでに、アスランの顔つきは、別人だった。








「――参りましょう、猊下」




アスランを不審に思うのは、その呼び名にもあった。


第二神殿の神官長に就任し、第二神殿を生活の拠点に移してもカガリは現皇帝の一姫であり、ヒビキ公爵ということに変わりない。




皇宮主催の行事には金の一姫として、ヒビキ公爵として出席しなくてはならなかった。


金の一姫としての行事は少なくとも、名門公爵家の当主としての行事は多い。




皇室の人間は中々公に出れないしきたりである為、公爵として、皇室の名代として、カガリは大変忙しい幼少期を過ごした。


皇帝の一姫でありながら、皇女の身分を与えられなかったカガリは、皇室の名代として、また皇帝の名代として動き回るに、とても都合が良いことも確かだった。






だからこそ、エドワードは幼い娘に公爵の名を継がせ、より公式行事に出やすい地位に置いたのだ。ただでさえ第二神殿神官長という地位を背負う娘に、公爵という立場を与えたのは、背に腹は替えられぬ理由があった。



カガリがヒビキ公爵となれば、ヒビキ公爵に対する支持がそのまま皇室に皇帝に直接向くことになる。






ヒビキ一族の者が公爵となれば、それはヒビキ家への支持だ。


皇帝の金の一姫が、公爵にあるのが最も重要だった。




神権の最高権力者“大御巫”を持たないエドワードは、どんな手を使ってでも、民衆の支持を得なければならなったのだ。







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