TIR NA NOG
□ガーターベルトの誘惑
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「……キスも、だめですの?」
眉間に皴を寄せるほど強く目を閉じる恋人の瞼にラクスは唇を落とした。
「うぅっ」
強く決心しているのにそれを揺さ振ってくるラクスに、キラは唸る。大変魅力に溢れた格好をした恋人を胸の中に抱いたまま、何もできないまま耐え忍ばなければならないのは男にとって拷問以外の何ものでもない。
堪えているけれどガーターベルトや太股を撫でる手は止まっていないのが揺れている証拠だ。
「……キス、しちゃいますわよ」
「…うぅっ酔っ払いぃ」
面白がっているな。この酔っ払いめ。
「おもしろいです」
キスを強張ればすぐに叶えてくれる恋人の変化がおかしくて、ラクスは笑った。その強い決意が何処までのものか試したくなる。
キラの言った通り、彼女は酔っ払いだった。
忍耐の強さを確かめるように、ラクスは彼の頬や鼻筋を指でなぞったりする。
「っ‥ら、く」
「キラ」
キュッと引き結ばれた唇にラクスはそっと自分の唇を合わせる。
淡くつけたルージュが恋人の唇についてしまった光景にラクスは目を細めた。
「キラ。わたくし、の、」
髪も瞳も全部綺麗だとラクスは思った。ルージュがついてしまったその唇すらも。
「ちょ、‥ほんと、に、まっ」
焦点の定まっていないラクスの視線に気づいたキラは制止の悲鳴を上げる。けれど彼女は止まらなかった。
「大好きです、キラ」
「っんぅ」
強く唇を押し付けられキラはもう固まるしかない。何故こんなことになったのか解らず頭が混乱する。
「らっラク」
「…くち、あけて」
閉ざされたままの唇が気に食わなかったラクスは催促するようにキラの下唇を噛んだ。
決意が煩悩に侵食されて行くのを感じながら、キラは唇を薄く開く。その隙間から入り込んでくる舌の熱に頭までが溶けそうになる。
「ん、…だ……め、だって」
「キスぐらい許して下さいな」
「らく…ッ!」
酷い、とは正にこのことだとキラは歎きながらラクスの舌に応えた。
こんな熱くて濃厚なキスをしといて、キスだけで終われというのだから。
彼女はキスで満足できるかもしれないが、こっちはそうじゃないのだと説教してやりたくなる。
「ぅぅっ………明日の、予定は?」
「っは――朝の7時に迎えが。だからキスだけです」
「ひどいぃっ」
酔っていてもしっかりしている所はしっかりしている恋人にキラは泣きたくなる。火を点けといて消してはくれないのだ。
男の本能を弄ぶ今の彼女は、キラにとって悪魔そのものである。
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