TIR NA NOG

□ガーターベルトの誘惑
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「・・・僕、怒ってるのに」






怒っているのに、こう甘えられてしまうと何も言えなくなってしまう。









「どうぞ、叱って下さいませ」





どの世界に胸に抱いたまま叱りつける者がいるというのだ。


胸の中にあった怒りが呆れにすり代わっていくのを感じたキラは、ラクスの腰に腕を絡み付け口を開く。









「ラクス。ひとつ訂正したいんだけど」



「?」



「僕が君に魅力を感じなくなるとか、有り得ないから。訂正しといてね」



「………」





訂正、を聞いたラクスは、ゆっくりと顔を上げ目をしばたたかせながらキラを見つめた。


恋人は至極真面目な顔で言っている。




それが可笑しくて、ラクスはついに笑い出した。








「ふふ。な、何をおっしゃるかと思えば」



「冗談じゃないんだけど」





ラクスにとってキラが現れる前まで感じていた不安など、彼の胸の中では瑣末なことだ。


抱き締められていると何も怖いものがない。











「全部聞いていらしたんですか」



「うん。聞こえた。ラクスの不満とか悪態とか全部聞いた」



「‥‥」





ついさっきまでの自分の姿を脳内で再構成したラクスは羞恥に頬を染める。


酒を飲みながら独り言を呟いて怒ったり泣いたり。変な女である。



しかもそれら全ては彼に向かって言った言葉だ。恥ずかしいことこの上ない。









「というか覗いてたんだ。ラクスが脱ぎはじめたから」



「まぁ」





羞恥の次には呆れがラクスを襲う。


相手の目を真っ直ぐ見つめてこうも変態発言ができる恋人に呆れ返った。










「その服。すっごい綺麗だし似合ってるけど、嫉妬しっぱなしだったんだ」



「嫉妬…」



「たくさん言われたでしょ。綺麗ですねって。でもラクスが綺麗だって知ってるの僕だけでいいじゃん」






これは酔っ払い?とラクスは内心で呟いた。よく意味が理解できない。









「ラクスの項も鎖骨も胸も太股も全部僕のだよ。それなのにそんな誘うような格好しちゃって。ガーターベルトなんて僕初めて見た」




腰に留まっていた手がすぐ下の太股に伸ばされ、下からゆっくり撫で上げてガーターの形を確かめるように触れる。


このくらいのお触りは戦時中のAAで慣れっこになってしまったラクスは動じることはない。










「今日は我慢するって決めたんだ。明日は初日だし。ラクスは絶対忙しいでしょ?……自重するって…決めたんだ」





柔らかい躯を抱き締めつつキラは目をぎゅっとつぶった。前みたい暴走できるような状況ではないと重々承知している。



お互いに酒を飲んでるし、明日の予定は仕事で詰まって忙しいのも分かっている。




今ここで手を出したらきっと止まらない。








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