TIR NA NOG

□ガーターベルトの誘惑
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それでも根気よく待っているとまた酒盛りを始めた恋人にキラの眉の皴は深くなった。



隠れているのも馬鹿らしくなり出ていこうと足を踏み出そうとしたら、悪口が聞こえてきて、再びキラの足が止まる。







唐変木、ケチ、ばか、アスラン――というのは自分に宛てた悪口であると悟ったキラは、口元を痙攣させた。




しかも泣きながらの悪口だ。




何も悪いことをした覚えはないのに。



何に泣いているのか、何が泣かせているのかサッパリだ。










「‥‥女たらしぃ」





漏れ聞こえたのはただ黙って聞き流すには我慢ならない言葉だった。







「――君に言われたくない」






キラは扉を開けラクスの背後に近寄り不機嫌に染まった声を吐き出した。








「っ?!」





キラの声に素早く反応したラクスは立ち上がり振り返った。






「!」





紛れも無いキラの姿にラクスは息を飲んだ。


涙で潤んだ瞳に彼の機嫌が最悪になっているとも知らずに駆け寄ろうとする。







「き」




しかし冷たい声に身体は停まった。







「唐変木、ケチ、アスラン、ばか、女たらし。言ってくれるね」




「‥‥‥」






言葉のひとつひとつに棘があるキラを前に、ラクスは口を噤み身を硬くする。








「他の男を誘惑して回った君には言われたくないね」




「っ」





腕を組み身に覚えのないことで責め立てる。


辛い。でもそこに彼がいる。


それだけで何倍も何十倍も嬉しい。






「あ、あと、もうひとつ。君は勘違いしてるみたいだけど」




キラは大股でラクスとの距離を縮める。



柔らかいカーペットで足音は立たないけれど、その歩みは力強かった。


速くその距離を埋めたいと訴えるように。








「ぁ」





キラは剥き出しになっているラクスの腕を掴むとそのまま胸の中に引きずり込んだ。






「ラクス」




裸足であるキラと高いヒールの靴を履いているラクスとの身長差はあまりない。



いつもより近いラクスの細い首にキラは顔を埋め香りを肺に満たす。




背中に腰に腕を回して、身体を密着させ、その柔らかさを堪能する。






ずっとずっと求めてきたラクス。



やっと戻ってきた。


やっと戻れた。








「ラクスっ」




強くしがみつかれ、ラクスの身体が傾いでいく。







「き、キ‥ラ‥‥‥っひゃ」




ついには支えきれず倒れ込むと、コーディネーターとしての身体能力を遺憾無く発揮したキラが床を蹴って側のソファにうまいこと着地する。


倒れ込んでも質の良いクッションがすべてを吸収し痛みなど皆無だ。




一瞬で場所が入れ替わり、キラを押し倒した状態になったラクスはその胸に頭を預け温もりに頬を寄せた。









「キラ」




制服越しでも伝わる熱が心地好い。頬を擦り寄せるラクスを見つめながらキラは溜め息をこぼした。







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