突発倉庫
□凡人の不器用な恋の仕方X
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――――――
「――いったい、なに?こんな朝から」
「っ…キラ!」
「僕、まだ眠いし。はっきり言って、迷惑」
面倒くさいという態度を隠さずにそうこぼすキラに、ラクスは眉を寄せた。
赤い目元にまた水分が溜まっていく。
ラクスはキラが怖いと初めて思った。
いつも優しかった幼なじみの急変に、頭がついていかない。冷水を浴びせられたような背筋に走る寒気が、キラの視線から感じる。
(なぜ、なぜっ!そんな瞳で‥!)
剥き出しの刃のような鋭く痛い紫電の眼差しに胸が押し潰されそうになる。
「ちゃん、と‥お話、してくださいっ」
夢だと思いたかった。昨日の全てを。
夢のような出来事だったから。
けれどそんな願いは塵となって消えていく。
ラクスは逃げ出すべきだと冷静な頭が訴えているのを感じた。
でも足は動こうとしない。
ちゃんと聞くまで、きっと動かない、と思うと、声は震えても勇気が出た。
「昨日、もうしたよ?」
「あれだけでは納得できません!」
肩を声を震わして、感情を露にするラクスは珍しい。それだけの衝撃が昨日のそれにあったということだ。
(僕が苦しいように、君も苦しいんだね)
昏い愉悦にキラの口許に笑みをのせた。
歪な情が心を満たしていく。
壊してしまえと訴える、深淵の闇が広がっていく。
「・・じゃあもう一回言うよ」
キラは理性を総動員して闇を押さえ込む。
まだ壊したくないという願いが強い。
「音楽を止めたのに、音楽を続ける君と一緒にいるのは‥正直、もう疲れたんだ」
「………」
「卒業も近いし、もういいかなって。僕はもういらないでしょ?だからやめたいんだ」
はやく。はやく、にげて。
君のうたが好きなんだ。ずっとずっと聞いていたいんだ。だから、にげて。
僕に君を、壊させないで。
――君が好きなんだ。
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