§Secret§
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アスランは隣に座った妻に訝しげな視線を何度も送っていた。
珍しく仕事関係のパーティーに出ると言い出した思ったら、何やら仮装までしている。
茶髪の鬘と紫のカラーコンタクトを装着し、群青色のナイトドレスで着飾り、化粧もいつもより大人っぽい。
実年齢より高く見えるように“変装”している妻に、アスランは混乱する。
これでは妻とは言えないし、何故、弟の外見を取り入れているのかが解らない。
キラとラクスが消えたと言って取り乱したあの日から、カガリの様子が可笑しい。
キラが戻り、ラクスがレイと婚約した。
妻のことも解らなければ、友人たちのことさえもさっぱりだ。
「……カガリ」
「なんだ」
「そ、その――なんでそんな格好を」
妻が何を企んでいるのか。
今回のパーティーにはラクスも出席する。
キラの外見そっくりになっても、カガリは男装しているわけではないのでラクスを刺激するつもりはないとアスランは考えていた。
女性らしい服装をしているので、気づいても親戚かしら、程度だろう。
中途半端な印象を与えてどうするつもりなのだ、とアスランは妻の応えを待った。
「別に。特に意味は無い」
「・・・・」
素っ気ない妻の返事にアスランは何も言えず黙り込んだ。
これ以上何も聞くな、という雰囲気がカガリから発せられていると感づいた。
余興が好きなカガリだが、そんな目的にも思えない。
「――会場に着いたら少し知り合いを探すから、アスランは挨拶とかしていてくれ」
「……わかった」
パーティーが終わったらゆっくり話す時間を取ろう。休暇でも取ってルークと三人家族の時間を過ごすのも悪くないのかもしれない。
アスランは見えてきたホテルの私道に車を走らせながらそんなことを考えていた。
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